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「これを、昴さまに」
一日を終え、自室へと戻ろうとする昴を、呼び留める声がする。
顔を見なくても、わかる。
この、低くて柔らかい響きは、暁斗の声。
振り返ると、手に小さな花束を持った暁斗が立っていた。
息を呑み、心の中で昴は感嘆の声を上げていた。
(あの暁斗が、僕に花を!?)
赤いバラの気分の僕に、花束を渡してくるなんて!
それは、白くて可愛い、カミツレソウの花束だった。
花を買いに出る余裕など、多忙な暁斗には無いはずだ。
スキマ時間に、自生の花をその手で摘んでくれたに違いない。
それを証拠に、リボンではなく、粗野な紐でくくってある。
それでも、昴は嬉しかった。
生真面目だが、洒落たことは苦手な、暁斗。
(そんな彼が、僕のために花束を……!)
花を受け取り、昴は暁斗と二人で、仲良く執事の間へと向かった。
彼の心は、すでに暁斗の部屋にとどまる気持ちだ。
二人で、愛を確かめ合う気持ちだ。
にこにこと、お喋りなどしながら、ゆるりと歩いた。
だがしかし。
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