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君とダビデに恋してるっ!

「……光貴さん、はじめてって絶対うそ!」 祭壇のようなベッドの上。雪だるまのように真っ白のリネンにくるまれながら、あおいがむくれた顔で光貴をにらんでいた。 その頬はほんのり赤く、目元は少し潤んでいて――正直とってもかわいい。 「えっ!? な、なんで!? ほんとに、ほんとのほんとに初めてだったんだけど……!」 突然の詰問に、光貴があたふたと手を振る。 「だって……あんなに、あんなにすごいのっ……!」 先ほどまでの行為を思い出したのか、最後の語尾は布団の中に沈んでいく。 「ていうか、僕がはじめての光貴さんを優しくリードするはずだったのにっ……途中で全部持ってかれたんですけど!? あんなの……ずるい……」 「……ごめんってば」 光貴はあおいのそばに寄ると、そっと手を取った。 「ねぇ、あおいさんの機嫌、直してほしい……なんでも言うこと聞くから。なんでも!」 「なんでも、ですか……?」 あおいの目がきらりと光る。光貴が反射的に肩をすくめる。 「じゃあ……“あおい”って、呼び捨てにしてください」 「えっ」 「だって、えっちのときは呼び捨てだったのに、いまさら“さん”付けなんて寂しいです」 「……あおい」 おずおずと口にしてみるその声が、やさしくて、低くて―― 耳の奥に、じんわりと残った。 「……はいっ」 あおいはふにゃっと笑った。どうやら満足したみたいだ。 「じゃあ、もうひとつだけ――」 「まだあるの?」 「さっき“なんでも”って言いましたよね?」 「……う、うん」 あおいはくるまったリネンの中から、もぞもぞと手を伸ばして、人差し指をぴんと立てた。 「光貴さんの身体、デッサンさせてください!」 「え」 「もちろんヌードで!」 「えっ!?」 言葉を失う光貴に対して、あおいは目を輝かせる。 「全身のラインとか、筋肉の陰影とか、神バランスなんですもん……!もちろんペニスも!せっかく運命の人に出会えたんだもん。じっくりじっくり、何時間でも見てたいんです……っ」 「いや、無理無理無理っ……!」 「なんでですかぁ〜、“なんでも”って言ったじゃないですか!」 「いやでもヌードはハードルがっ……!」 顔を真っ赤にして慌てる光貴に、あおいはすかさずたたみかける。 「え、でも僕ら、もっとすごいことしてますよね?」 「うっ……!」 「ぜんぶ見せ合ったのに、いまさら照れるのおかしくないですか?」 「それは……それとこれとは……!」 「へぇ〜〜〜?」 「……ああもう、あおいのそういうとこ、ずるいよ」 ──後日、光貴が根負けしてヌードモデルをすることになるのは、また別の話。

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