凛太朗の深くて濃密なキスに導かれるまま、紫季の中で、今まで眠っていた感覚がゆっくりと芽吹いていく。 　背中をなぞる凛太朗の指先がくすぐったくも甘くて、思わず唇が緩み、彼の舌を迎え入れていた。 （……気持ち、いい） 　酔うようなキスのさなか、ふいに胸元を指先でつままれ、紫季の身体がぴくんと跳ねた。 　その瞬間、凛太朗の動きが止まる。 　紫季の反応を確かめるように、じっと見つめてくる視線が恥ずかしくて、思わず体を小さく丸めた。 「な、なに……？　変だった……？」 　声が震える。 　こんな自分を見て、がっかりしたんじゃないか。そんな不安を押し隠すように視線を逸らすと、凛太朗がぽつりと呟いた。 「違うよ……違う。ただ、ずっと……紫季のこと、頭の中で何度も思い描いてきたんだ。きっと、可愛いんだろうなって……」 　そう言って、口元を手で隠しながら続ける。 「でも……実際に目の前にすると、想像の何倍も可愛くて……ほんと、鼻血出そう」 　照れくさそうに笑ったかと思うと、ふいに顔を伏せ、唇を紫季の胸元へと寄せた。 　舌先がそっと小さな突起をなぞり、その感触に紫季はまたもや腰を跳ねさせた。 「ぁ……」 「ふふ、かわいい」 　甘く囁かれると、それだけで体の奥に熱が灯る。 　凛太朗の舌が片方の乳首をやさしく舐めながら、もう一方へと手が伸びて、輪郭をなぞるように触れていく。 「……んっ……ぁ……」 　こらえきれない吐息が、紫季の唇から洩れた。 　指が反対側をかすめるたび、体が小さく跳ねる。 　その視線が、ふと下腹部へと落ちる。何も纏っていないそこに目を向ける凛太朗の眼差しに気づき、紫季はあわてて両膝を閉じようとした。 「や……見ないで……」 　けれど、それは凛太朗の足によって阻まれた。 　鍛えられた太ももでがっちりとホールドされ、紫季の秘めた部分があらわになったまま、身動きが取れない。 「ダメだよ。隠さないで。もっと見せて」 　そう言って、凛太朗は紫季の両太ももをそっと持ち上げる。 　胸に膝がつくような姿勢にされて、普段は誰にも見せたことのない場所まで、全てが晒された。 「……ぁ……そんな……やだ……」 「ほんとに？　今からここ、ゆっくり触れていこうかなって思ってたんだけど……やめようか？ 　俺、紫季に触れられるだけで幸せだから。挿れるだけがすべてじゃないし」 （……そんなこと言って……） 　紫季の目が自然と凛太朗の下半身へと向かう。 　スウェットの上からでも明らかにわかるほど、彼のそれは熱を持って膨らんでいた。さっきから時折、太ももに当たっていた感触も、その存在をはっきりと主張している。 （……正直、見てみたい） 　最後に見たのは、まだ二人が小学生の頃。修学旅行で一緒に入った温泉だ。 　その頃から、凛太朗はひときわ背が高く、体つきも大人びていたのをぼんやりと覚えている。 　とくに印象に残っているのは、彼だけが生え始めていた陰毛だった。 　まだ誰もがつるつるの中で、数人しか毛が生えておらず、周囲から密かに羨ましがられていた。 　あの頃と違って、いまの紫季には”見る理由”がある。 　恐怖よりも、好奇心の方が、静かに、でも確実に心を突き動かしていた。 「……いい。続き、して……」 　紫季はそっと凛太朗の腕を引き寄せ、自分の腰の奥へと導く。 　言葉は少なくても、その目に宿る微かな震えと熱に、すべての意思が込められていた。 「うん……じゃあ、ゆっくりほぐしていくよ」 　凛太朗はベッドの脇にあったローションを手に取り、紫季の下腹部にそっと垂らす。 　少しひんやりとした液体が肌の上を伝い、内腿を抜け、さらに奥へと流れていく。 　凛太朗はそれを指先ですくい、まだ誰にも触れられたことのない場所の周辺に、じんわりと塗り広げた。 「……ん、んん……」 　紫季の喉から、小さな声が漏れる。 　くすぐったさと、未知の刺激に戸惑うような吐息だった。 「まだ緊張してるね」 　凛太朗は囁くようにそう言うと、もう一滴ローションを垂らし、それを紫季の胸元にも落とした。 　冷たい感触が、熱を帯び始めた乳首に触れて、ピクリと震える。 　スルリと指が撫で、時にキュッと摘ままれ、柔らかな山を転がされるたびに、紫季は甘く息を洩らす。 「ぁ……ん、あっ……」 　何度も吸われ、転がされ、愛撫されるうちに、紫季の吐息は熱を孕み、身体の奥から響くような声に変わっていく。 　ピクピクと腰を揺らしながら、触れられることに素直に身を委ねていた。 　そんな紫季の反応に意識が向いている間に、ふいに凛太朗の指が、奥の扉をやさしく押し開いた。 「……っ、あ……！」 　一瞬、全身がびくりと跳ねる。 　でも、怖さよりも先に、妙な安心感と、凛太朗の温度に包まれるような感覚があって、紫季の体からは次第に力が抜けていった。 「紫季……ほら、こっち。気持ちいいの、伝わってくるよ」 　耳元でささやかれたその声に、鼓動が跳ね上がる。 　次の瞬間、乳首にぬるりとした感触が走り、再び凛太朗の舌が触れてきた。 「あっ、や……ぁ……」 　舌がわざとらしく音を立てて吸い付き、転がし、執拗に愛してくる。 　その音と感触に、心臓がどくどくと脈打ち、ふいに奥に差し込まれていた指が、キュッと締まるのが自分でもわかった。 「……あ、締まった」 　そう言って笑う凛太朗の声に、紫季の頬は一気に紅潮する。 「恥ずかしい……」 　思わず漏れた声に、凛太朗は優しく微笑んだ。 「紫季、ほんとに可愛い。 　この顔も、声も、肌も……頑張り屋なとこも、人には見せない優しさも。 　全部、俺だけに見せてくれてるんだって思うと、もう嬉しくてどうにかなりそう」 　凛太朗の言葉が、優しく心の奥に染みていく。 　それはただの欲望ではなく、ちゃんと”紫季という人間そのもの”を見つめ、受け入れてくれる愛のことばだった。 　（……こんな間抜けな格好の時にそんなこと言うなよ……） 　泣きそうになる気持ちを紛らわせるように、紫季はそっと凛太朗の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きついた。 　（凛太朗だけは、俺をちゃんと見てくれる……）