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第29話 幻想のその先
「あ……っ!」
凛太朗の熱が、ぐんと奥まで届いて――紫季の背中がぴんと跳ねた。
チカチカと星が散るような感覚に、瞳が潤む。
奥を突かれた違和感はまだ残る。けれど、さっきよりずっと、痛みはやわらいでいた。
凛太朗の体温がじわじわと自分の中に馴染んでいく。
それだけで、胸がきゅっと締めつけられるような気持ちになった。
「紫季、入ったよ。……ちゃんとわかる?」
耳元で、優しくたずねられる。
紫季は声にならないまま、こくん、こくんと頷いた。
頬は涙と汗で濡れていたけれど、凛太朗のぬくもりが、心ごと包み込んでくれるようで――
「……動いて、いいよ」
しがみつくように囁くと、凛太朗の腰がゆっくりと動き始めた。
抜けきる寸前まで引いて、また奥へ、丁寧に優しく。
それを何度も繰り返すたび、紫季の中は少しずつ、凛太朗のかたちに慣れていった。
やがて角度を変えられると、甘い痺れが走る。
「あ……っ、あ、あんっ……ん、っ、は……」
抑えきれず、口からこぼれる声。
恥ずかしくてたまらないのに、凛太朗の顔を見たくて、思わず上目づかいで見上げた。
(……すごく、エロい顔してる……)
眉を寄せて、喉を震わせるように喘ぐ凛太朗。
普段のクールな表情じゃない、熱に浮かされた“男の顔”。
それを見てしまった瞬間――紫季の胸の奥が、ぎゅうっと締めつけられる。
(凛太朗……好き……)
小さな声で、「もっと、好きにしていいよ……」と囁いた。
その瞬間、凛太朗の動きがわずかに変わる。
ピストンが速く、深くなって、低く「やば……もたない……」と呟く声が、耳に残った。
「んっ、あ、んん、やっ……!」
紫季は反射的に、両足を凛太朗の腰に絡めた。
もっと感じたい、もっと繋がっていたい――無意識のうちに、そんな欲が溢れ出していた。
自分でも驚くほど、体が素直になっている。
こんなに心も体も預けられる人は、きっと凛太朗だけだ。
時間なんてわからなかった。ただ、無我夢中でお互いを求め合った。
そして――ふたり同時に、果てた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
2人とも、肩で息をして呼吸を整える。脱力して、手足を放り出している紫季の横に、凛太朗も倒れ込んできた。
「やばい…」
「うん…やばいな…」
一言交わしただけだが、2人とも何が言いたいのかわかった。
(ヤバい…ハマりそう…)
そう思った矢先、凛太朗は言った。
「俺セックス舐めてた…気持ち良すぎる。これ頭バカんなる。公式全部抜けそう…」
ふふっと紫季が笑う。
「それな。でもさー、よく考えたら俺たち十七歳じゃん?男子高校生じゃん?今まで恋人も作らず、欲は自分で発散してたわけじゃん。そんな俺らがさ、セックスの味を覚えたらそりゃ頭もバカんなるわけだよ。俺は猿になる未来しか見えない」
「同じく…だってほら……」
紫季は腕を取られ、凛太朗の性にあてがわれた。
「なっ、お前!」
凛太朗のソコはもう、熱を帯びていて硬く反り立っている。
「だって、受験生の前に思春期男子じゃん。そりゃ頭ん中エロい事しか考えらんなくなるじゃん……その上、紫季が横に居るんだもん。やばいよ……絶対勉強と両立するぞって宣言したちょっと前の自分を呪う……」
(コイツ、真っ裸でちんこ勃たせて真剣に悩んでる……)
紫季は、「ぶっ…ははははっ」と吹き出して大笑いした。
「なんだよ?真剣に悩んでんだけど…俺自制できる気がしないよ……」
甘えて擦り寄ってくる凛太朗を抱きしめて、腰に足を巻きつけた。そして、凛太朗の乳首をペロッと舐めて、キスをする。
「なっ……紫季!」
「とりあえず、今日はいいんじゃない?とことん性欲発散しようぜ」
「えええええー?嬉しい…嬉しいけど、お尻が心配なんだけど…紫季、処女なのに大丈夫なの?」
「処女言うな!お前が懇切丁寧にほぐしたから大丈夫だよ!高校生男子の性欲なめんな」
「それ、俺のセリフなんだけど……」
紫季の挑発に、凛太朗の表情が崩れる。
そのまま抱き上げられ、紫季の身体は凛太朗の上に乗せられた。
灼けるような熱を帯びたものが、太ももの間に触れてくる。自然と身体が反応して、奥の筋が小さく蠢いた。
(もう、俺は……抱かれる側なんだな)
紫季は自分の中に起きた変化を、照れくさくも素直に受け入れる。
割れ目にそっと、熱を密着させて言った。
「凛太朗……もう一回、挿れて」
そして再び、2人は夜の波に身を投じていく。
深く、甘く、互いの体温と鼓動を確かめながら。
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