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【6.バスケ部見学と入部決意】
放課後は新入生の部活動見学があるため、今日は短縮授業だった。
新入生には「部活動紹介」と書かれたパンフレットが配られ、活動内容や部室の場所が書かれている。
「ゆきちゃん、どこ行くか決めた?」
「もちろん!バスケ一択」
小学校では陸と一緒にバスケクラブに入っていた。
難しいパスが通った時とか、ミラクルシュートが決まった時のあの感覚が忘れられない。
この学校を選んだのも、もっとバスケがやりたかったからだ。
他の部活を選ぶなんて考えたこともない。
「陸は?どこにするの⋯?」
声に少し不安が混じる。
「バスケに決まってんだろ!俺とゆきちゃんが組めば無敵なんだから!」
肩を組んで来てニコニコと笑う。
俺も安心して笑顔が漏れた。
***
蒼陽学園のバスケ部は全国クラスの強豪校。
いくつもある部活の中で1番力を入れている部活であり、バスケ部専用の体育館まである。
体育館に行く道すがら陸がそう教えてくれる。
中等部は学校の体育館で、高等部はバスケ部専用の体育館で練習しているらしい。
体育館に着くと、有名なだけあって新入生がたくさんいた。
「うわ⋯すごい人気だな⋯⋯」
思わず零れた本音に、
「怖い?やめる?」
なんて聞いてくる陸に首を振る。
やめるわけがない。
自分の力がどこまで通用するのか確かめたい。
はやる気持ちを抑えながら、案内されるのを待っていた。
やっと体育館内に入って周りが落ち着いた頃、バスケ部の主将が活動内容を説明してくれる。
それを聞きながら辺りを見渡すと、誰かと目が合った。
瀬川先輩だ。
今朝、何部か聞いてなかったから、まさかの出会いに少し驚く。
活動内容を一通り聞いて、部員の練習風景を見せてもらう。
小学校のバスケクラブとは全然違う。
シューズが床を蹴るたびに響く「キュッ」という音。
ボールを弾く音、パスの声がけ、パスを受け取ってからシュートに入るモーションの速さ。
全てが俺をワクワクさせていた。
「ゆきちゃん、楽しそうだね?」
「りっくん、俺バスケ部に絶対入る!この中でやりたい!」
思わず小さい時からの呼び名で呼ぶ俺を見て、
「なら俺もここに決めた」と陸は微笑むのだった。
***
体験希望者は部員とのパス回しに参加できると聞いて、迷わず参加した。
相手は瀬川先輩だった。
最初はキャッチボールのようなゆるいパスを何度か繰り返し、その後は動きをつけてみる。
最初は取りやすいパスを出してくれるなって思ってた。
時間が進むにつれ、どんどんタイミングが噛み合ってくる。
目が合う。合図もしてないのに、タイミングを測ったようにパスが飛んできた。
手元にボールが収まると、すぐに返す。
言葉も、動きの打ち合わせもない。
なのに、ぴったりと噛み合う。
目が合えば、次に何をするかがわかる。
まるで見えない線でつながっているみたいだった。
周囲のざわめきも、体育館の空気も、全部ぼやけていく。
俺と瀬川先輩の間にだけ、別の時間が流れているようだった。
「そこの新入生、名前は?」
主将に声をかけられる。
「小鳥遊です!」
「ちょっと瀬川とペアでシュートまでやってみろ」
返事をする前に瀬川先輩からボールが飛んでくる。
難なくキャッチ、パスを送る。
今欲しいと思った瞬間、飛んでくる。
何度かパスを回してそのままシュート。
ボールは吸い込まれるようにリングに入っていく。
特に声掛けもせずにパスからシュートまで決まった。
嬉しさや興奮から指先が震えていた。
「⋯⋯すげぇ⋯⋯」
「いまの見た?」
周囲がざわめき、主将や部員たちの目が俺たちに注がれる。
初めて感じた。
誰かとこんなにもフィーリングが合うのかって。
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