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【6.バスケ部見学と入部決意 -○○視点- 】
【陸視点】
優希が2年生とパス練しているのを眺めていた。
俺と組んでる時と同じ軽やかさだ。
「ゆきちゃん、今欲しいよな」って俺が思ったタイミングで、先輩もパスを出す。
なんだこの人⋯⋯すげぇ。
シュートまでの流れをやってみろと主将が言う。
そこからが早かった。
優希からパスを送る、走る。
今! ボールが優希の手元に収まる。からのシュート。
⋯⋯俺と組んでる時には見せないような表情を見せる。
あいつ、心の底から楽しんでる。
握る手に力が入る。
俺は無意識に、先輩にライバル心を燃やしていた。
***
【悠人視点】
同室の後輩がバスケ部の見学に来た。
小さいのによく目立つ。自然と目を引く。
目が合って驚きの表情を見せる。
そういえばバスケ部だって言わなかったか。
いつもの練習風景を新入生に見せる。
中には「絶対ついていけない」と、やる前から諦めて体育館から出ていく生徒もいたが、その中でも目をキラキラと輝かせて見ている生徒。
小鳥遊だ。
自分がどんな表情をしているのか、分かってないんだろうな。
希望者がパス練に参加してくる。
小鳥遊も来た。たまたま俺とペアになる。
最初は軽めのパス。徐々に動きがつく。
(ここだろ)パスが通る。(今欲しい)来た!
やりやすい。どこまでついてこれるのか試したくなる。
俺のパスは部内でも速くて鋭い方だ。
普通の一年なら慌てて取りこぼすか、腰が引ける。
それでも小鳥遊は喰らいついてくる。面白ぇ。
主将が俺と小鳥遊でシュートまでやってみろと言う。
やるぞ。お前、ついてこれるよな。
欲しいところにパスを繰り出す。
小鳥遊がそのままシュート。
きれいに弧を描いてゴールが決まる。
もっとこいつとやりたい。
そんな昂りを確かに感じていた。
***
【その夜/優希視点】
のんびりお風呂に浸かりながら思い返す。
部活見学、楽しかったなぁ。
欲しい時に手元に来るパス。陸もいいパスをくれるけど、正直陸よりも刺激的なパスだった。
「⋯⋯またペア組みたいな⋯⋯」
静かな浴室に響く小さな本音。
瀬川先輩の存在は、確かに俺の中に爪痕を残していた。
お風呂から上がると、ソファで本を読んでる先輩がいた。
「すみません、お風呂先いただきました」
頭を下げると、
「気にするな。俺は別に気にしないから」
と立ち上がってお風呂に向かって行った。
⋯⋯どうしてあんなパスが出せたのか、知りたいと思った。
もう少し話したいな、と思った。
そう思ってソファに座って待ってたんだけど
──気付いたら寝落ちしてた。
しかも朝までぐっすり。
寝落ちしてる俺に毛布をかけてくれたんだろう。
俺のじゃない毛布が掛けられている。
先輩に礼を言うため、ベッドの方を見る。
⋯⋯礼を言うのは今じゃない方が良さそう。
朝が弱い先輩は今日も不機嫌顔だ。
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