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第13話④
「蓮――――っ!」
突然、静かな縁側に落雷のような怒号が響いた。
僕も蓮さんも、とっさのことで動けなかった。固まる僕たちの前に、誰かが勢いよく走り込んでくる。
「なにやってんだてめえ!」
と叫びながら僕たちの目の前に走り込んできたのは、なんと千里くんだった。
「ち……千里っ!?」
ひっくり返りそうな声で蓮さんが叫ぶ。
僕も固まったまま、茫然と赤い顔で息を切らしている千里くんを見あげた。
(どうしてここに千里くんがいるの……? なんで……?)
急激な状況の変化に思考が追い付かない。
鬼のような形相の千里くんは、いきなり蓮さんの胸倉を掴んで引き立てた。
「てめえっ、凪に何やってんだって聞いてんだっ!!」
「え!? な、なに!? 千里!?」
わけがわからず驚愕している蓮さんを、千里くんが大声で怒鳴りつける。あまりの迫力に僕は動くことができず、もみあう二人を茫然と仰ぎ見ることしか出来なかった。
ちょっと待ってよ、どうしたの、落ち着いて、と蓮さんが慌てながら千里くんに声をかけるが、すっかり興奮した様子の千里くんは聞いていない。
「いま凪に何したァ!!」
「なにっ? なにしたっけ俺!?」
「聞いてんのはこっちだ!!」
「千里っ、辞めろ!」
叫び声とともに、今度は蒼佑さんが門の前から飛び出してきた。もみ合っている千里くんと蓮さんのところに駆け寄ると、蒼佑さんは千里くんの腕を掴む。
「千里、落ち着け!」
「うるせえ! 蒼佑は黙ってろ! いま蓮と話してんだ! おい蓮っ何で凪を泣かせてんだって聞いてんだよ!」
「話し合いになってないでしょ……! ――このッ」
蒼佑さんは暴れる千里くんを羽交い絞めにしてなんとか蓮さんから引き剥がすと、拳を握って千里くんの頭に容赦ない鉄拳をお見舞いした。
ゴンッという衝撃音。
「いっっっってぇっ!!」と千里くんが頭を押さえて地面にうずくまり、「落ち着けバカ!!」と蒼佑さんが仁王立ちで息を切らせ、「だずがづだぁ~~~~ぞうずげえぇぇ」と蓮さんが蒼佑さんの足元に縋りつく。
僕はその様子を、呆気にとられて見つめた。
……なんだこれは。一体何が起きているんだ。
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