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第16話
浩貴とキスはした。翔多にとってのファーストキス。
そしてそのキスと同時に浩貴に告白をされたのだ。でも多分そのずいぶん前から翔多のほうは、心の奥のうんと深いところで、浩貴への恋心を募らせていたのだと思う……気づかなかっただけで。
その後、彼の気持ちに翔多も応えて、二人の関係は親友同士から恋人同士へと変わった。
大人のキス……いわゆるディープキスというのを交わしたのは、ファーストキス同様、翔多の部屋だ。
いつものようにおやつを食べながら、二人して他愛のない話をしているとき、ふと沈黙が訪れた。そのとき浩貴が翔多を抱き寄せたかと思うと、強く唇を重ねてきた。
いつもより激しいキスに翔多は驚き、ちょっぴり怖くて、逃げようとしたが、彼の腕がすっぽりと翔多を抱きすくめていて、かなわなかった。
噛みつくようなキスに呼吸までをも飲み込まれてしまい、息苦しくなった翔多が酸素を求めて薄っすらと唇を開けると、彼の舌が入り込んできて……。
そのときの浩貴はひどく大人っぽくて、どこか知らない男の人のようにも思えて、でもやっぱりかっこよくて、翔多の心は狼狽えまくり、少し泣いてしまった。
翔多は伯父さん夫婦の家へ下宿、浩貴は小学生の弟がいる。
そんな二人の状況ではなかなかキスより先に進むことは難しい。それに本音を言うと翔多はキス以上に進むのが少し怖くもあった。
そういう様々な理由から二人の仲は、大人のキスの段階でちょっとのあいだ停滞していた。
だが、恋心というものは成長をし続けるらしい。先へ進むことを怯えていた翔多も浩貴ともっと近づきたくなってきた。
そんなとき、思いがけず二人の仲を進展させる環境が与えられることになった。
翌週の土、日に伯父さんと伯母さんが夫婦そろって一泊二日の旅行へ行くという。
「翔多も一人じゃ心細いだろ? 浩貴くんに泊まりに来てもらえよ」
「そうね。私たちも翔多一人じゃ頼りなくて心配だし、そうなさい」
伯父さんと伯母さんにそんなふうに言われた。
「えっ……」
動揺する翔多の様子を、伯父さんはなにをどう勘違いしたのか、
「分かってる、分かってる。缶ビール一本ずつだけなら飲んでもいいから。一本だけだぞ」
とんちんかんなことを言った。
「……うん」
――こうして、浩貴と翔多、二人きりの夜という状況は整えられたのだった。
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