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第6話※
朔が振り向くといつの間にか、冬真が背後に立っていた。いつも通りの優しい表情なのだが、よく見ると目が笑っていない。
「お、お散歩……に行こうかなって思って………」
冷えた視線に背筋を這い上がるような寒気がした。身体はガタガタ震え出す。
冬真は怒っているのだろうか。
今、どういう行動を取るのが正解なのか、朔にはわからない。
冬真が朔の肩に手をそっと置いた。優しい手つきだが、指先に若干力が入っていて逃げられないと悟った。
「大丈夫。怒ってないよ」
「う、嘘……っ」
声が上擦った。
冬真の言葉が怖い。絶対に嘘だ。
恐怖で膝の力が抜け、しゃがみ込みそうになった所を冬真に抱き上げられた。
階段を上がり、二階の冬真の寝室に連れていかれる。
窓とカーテンは締め切られていて、部屋の中は暗く空気が重い。
ベッドに座らされるように降ろされた。
「身につけてるもの全部、脱いで」
と、なんでもないかのように軽く冬真は言った。
朔は目を見開き、冬真を見上げる。
「なん……で? できな、い……です……」
首を横に振り拒んだ。何度も何度も。
けれど、冬真は鉄仮面のように無表情で、朔を見下ろしているだけだった。
(怖い……)
何故脱がなければならないのか、言う通りにするまでこのままなのか、許してもらうことは出来ないのか、脳内を思考がぐるぐる駆け巡る。
「ごめんなさ……い…………」
謝っても、冬真の表情が崩れることはなかった。
視線が突き刺さる。流れる沈黙――――
何がいけなかったのか考えても答えは見つからなかった。
張り詰めた空気に耐えられず、朔は震える手でロンTとジーンズを脱いでいく。
下着一枚だけの姿になった朔は心細くなる。
(こんな格好、恥ずかしい……)
人前で風呂以外で肌を晒すのには抵抗があった。もうこれで勘弁してほしい。
下着は脱げない。どうしてもそこは抵抗がある。
「脱げない? まあ、いいか。じゃあ、両手を出してみて」
下着を脱ぐことを許してもらえ、ホッとした朔は素直に両手を前に差し出した。
すると、脱いだ服で手首を縛られてしまった。
一気に絶望感に支配された。
「あ……」
震えて声がうまく紡げない。自分の身に何が起きようとしているのか見当もつかない。
でも、良くないことなだけはわかる。
後ずさろうとしたが、手がうまく使えず動けなかった。
「大丈夫だから……。これはお仕置き。痛いことはしないよ……ただ気持ちよくなるだけだから」
低い声で耳元に囁かれ、背中に手を添えられたかと思うと―――そのまま、押し倒された。
「……おし……おき?」
恐ろしくなった朔は、冬真が今どんな顔をしているのか見たくなった。
いつも通りの優しい冬真の表情がそこにあると信じたくて――――
けれど、恐怖で涙が滲んで視界が見えない。涙が溢れてはこめかみを伝って、シーツに吸い込まれていく。
「なに……もっ、わるいこと……してっ……な…………」
首筋、肩から腕、腕から腰へと、冬真の指がゆっくりと這う。
ざわっと産毛が逆立つような感覚に朔は、身を捩った。
「そうだね、悪いことはしていない」
「じゃ……あ…………、やめ……って…………」
身を捩るたびに指が執拗に追いかけてくる。
指を這わせながら舌もぬるぬる追ってきた。
「外に出ようとしたから……」
「んっ……ぁ、え……?」
冬真から与えられる刺激は不快なだけのはずなのに、何かがおかしい。呼吸が乱れる。
与えられる刺激に戸惑った。
(こんなの、知らない……)
身体中を隈なく冬真に舐められ、身体がベッドの上をのた打つ。
刺激が快楽に変わりつつあった。身体に熱が篭もり始めている。
「一人で外に出て、何かあったらどうするの?」
朔を責めるような冬真の口調が怖いのに、身体は反応することを止めなかった。
「……ああっ!」
首筋に唇を押し当て強く吸われ、ねっとり舐め上げられる。
ゾクゾクと強く電気が背筋を走った。
「私の知らない所で、朔くんに何か起きたら嫌だよ……」
冬真が何言ってるのかよくわからない。
聞かなきゃと思うが、それどころではなかった。
身体を這う指と舌に翻弄される。
(なんで……こんな、気持ちよくなりたくないのに……)
朔のものが兆し始めていた。
下着に輪郭が浮かびあがり、キツく感じる。
冬真の手が布越しに昂ってるところを触れ、上下に撫でられる。
「だから、出歩いてはダメ。それだけはわかってもらいたいな」
「わかった! っから、もうやめ……て」
朔は何度もコクコクと頷くが、冬真の手が止まることはなく、硬さを増したところを何度も上下に撫でつけられ思わず腰が浮く。
「……やだぁっ」
信じられないくらいに気持ちがいい。
けれど、人にされることが初めてな朔にとっては刺激が強く、辛いものだった。
足をバタつかせ、冬真の手から逃れようと腰を捩る。
「気持ちいいね、朔くん」
どんなに抵抗しようとも冬真の手から逃れることは出来なかった。
撫でる動きから擦る動きに変わる。
「あっ……やぁ、うぅ…………」
「可愛い」
朔のものがビクビクと脈打ち、先端から汁が滲み出て下着を汚していく。
浅い息を繰り返し、堪えようと唇を噛んでも声が漏れてしまう。
「もう、一人で外出ない?」
「で、ないっ……から」
与えられる快楽に頭が真っ白に塗り染められていく。
足の指先に力を込めて耐えようとするが、じわじわ痺れが下腹から広がり、何かがせり上ってくる。
「やあぁぁっ……!」
耐えきれず朔は、ビクビクと全身を波打たせながら下着の中で白濁液を吐き出した。
「ほら……ね。痛くなかったでしょ?」
薄れゆく意識の中で、冬真の甘い声が聞こえていた。
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