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第6話 初恋の人 ③
今日は晴天。
馬を走らせると風が頬を撫で、土を蹴る蹄 の音が心地いい。
「サイモン、気持ちいいね」
「そうだね」
サイモンの髪が、馬の動きに合わせて上下に靡く。
本当に綺麗。
サイモンの隣で走れる幸せを噛み締めた。
丘の上からは街の様子がよく見えた。
「秋に行われる収穫祭には、レオも一緒に行こう」
「本当に!?」
収穫祭前後は季節の変わり目で、ミカの体調が崩れやすい。
だから今まで一度も行ったことがなかったけれど、ずっと収穫祭に行きたかった。
「でも今年はミカと結婚して初めての収穫祭だよ。そんな時に僕も一緒に行ってもいいの?」
「もちろん。ミカだってレオと一緒の方が嬉しいと思うよ」
サイモンはそう言ってくれるけれど、本当にそうだろうか?
ミカはサイモンのことが幼い頃から大好きだった。
僕がどんなにサイモンのことが大好きになっても、決して一緒にいることはできない……。
今年の収穫祭はやっと大好きなサイモンと結婚でき、ミカはきっと二人きりがいいに違いない。
でも僕も一緒に行きたい。
そう思うのは僕のわがままだとわかってる。
だから僕は……、
「やっぱり行かない」
そう決めた。
ミカとサイモンの幸せを願うんだ。
「結婚してサイモンと新しい土地で暮らすことになるミカにとって、ここでの感謝祭は最初で最後の感謝祭で大切なお祭り。だからサイモンとミカ2人だけでいくべきだよ。2人だけの新しい思い出を作ってよ」
僕は城主になる。
僕の気持ちだけで動ける時は、終わったんだ。
「そう……だね」
切そうにサイモンが微笑んだのは気のせいだろうか?
昼食までに邸宅に帰ったけど、父様達は僕達が乗馬をしに行ったを知っていた。
サイモンが庇ってくれたから怒られずにすんだけれど、のけ者にされたミカは怒っていて宥めるのに苦労した。
きっとミカは体が強かったら、僕よりもっとサイモンと仲良しで、2人だけで出かけていただろう。
そんな時、僕1人置いて行かれていたら、きっと僕もミカと同じようにかなしかったと思う。
サイモンはミカの大好きな人で婚約者。
もう僕はサイモンと一緒にでかけてはいけない。
そう心に決めた。
それから僕はできるだけサイモンとミカが2人で過ごせるようにしたし、もしサイモンなにかする時も必ずミカと一緒にした。
僕はカトラレル家城主になる。
ミカはオリバー家城主夫人になる。
僕達は来月18歳になる。
ミカはサイモンと結婚。
その時、僕の長年の初恋も終わるんだ……。
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