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第33話 野菜ジュース ②

 サイモンは本当にキスが好きだな。  僕も大好きだけど。  さっきサイモンにキスされた唇を触りながらドサッとベッドに倒れ、しばらく寝ていようと思った時、またドアをノックする音がする。  サイモン、また何か用事かな? 「はい」  と答えると、入ってきたのはサイモンではなく、いつも僕の世話をしてくれている僕より五歳年上の侍女のエマさんだった。 「ミカエル様、おはようございます」  エマさんの手には、銀色のトレイに見覚えのある緑の飲み物が乗っている。 「見た目は良くありませんが、二日酔いに効く飲み物です」  差し出されたのは、さっき飲んだばかりの例の飲み物。 ーそれ、さっき飲みましたー  そう言おうとしたけれど、せっかくエマさんが僕のために作ってくれたドリンク。  飲まないのは申し訳ない。 「ありがとう」  よし!と意を決して飲むと.…。 「あれ?美味しい……」  さっき飲んだ飲み物と同じものとは思えないほど美味しい。  これなら二日酔いじゃなくても、毎朝飲めそうなくらい美味しいし、後でミルクを飲まなくても大丈夫だ。 「さっきサイモンが同じような緑のドリンクを持ってきてくれて飲んだのだけど、すっっごく野菜の味がしておいしくなくて……。でもエマさんが作ってくれたドリンクは、おかわりしたくなるぐらいすっごく美味しい」  前のめりになりながら言うと「それは嬉しい限りです」といいながらも、エマさんはクスクスと笑っている。  何か変なことを言ってしまっただろうか?  首をかしげてる。 「あ、失礼しました。いえ、さっき調理場でサイモン様が何か作られているのをお見かけしたもので。剣とナイフと羽ペン以外持たれたことのなかったサイモン様が、ミカエル様のためにドリンクを作られていたのかと思うと、可愛らしくて」  またエマさんがクスクスと笑う。  サイモンが僕のために?  嬉しくて胸がキュンとなる。 「ミカエル様は本当に愛されておられますね」  サイモンに大切にしてもらっているとは思っていたけれど、愛されてるなんて。  嬉しさと、エマさんにそう言われて恥ずかしくて頬が赤くなる。 「本当にお二人はお似合いです」  そう言った後に、エマさんは「そうそう」と銀色のトレイに乗せていた白い封筒を差し出した。  封筒には 『親愛なるミカエルへ』と書かれていて、裏側を見ると『ルーカス』と書かれていた。  ルーカス様からの手紙だ! 「本当は昨日届いていたのですが、ミカエル様が体調不良とのことだったので、お渡しが遅くなり申し訳ありません」  頭を下げられて、 「いえいえ、そんな!あれは僕のせいですから」  僕が急いで言うと、エマさんは『ん?』というように首を傾げる。  もしかして、今、墓穴を掘りかけている!? 「あ、いえ、その、深い意味はなくて….。手紙、ありがとうございます。返事が書けたら、またルーカス様に送ってください。さ~返事を書くぞ~」  焦って無駄に言葉数が増えてしまう。 「また何かありましたら、呼んでください」  そう言ってエマさんは部屋を出て行った。

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