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第44話 恐れていたこと ①

 僕とサイモンは2日かけて宮殿に行った。  その間も僕はサイモンに求められ続け、2人で欲望の中に落ちていった。  挿入されている時、僕は何度も頸を噛んで欲しいと訴えても、ヒートの時に番になれば僕の身体に負担をかけず、より深い絆が生まれるとサイモンは噛んではくれなかった。  噛んでもらえず寂しい気持ちもしたけれど、サイモンが僕の身体のことや深い絆を求めてくれていることが嬉しかった。  サイモンが僕越しにミカを見ていたとしても、それはもう構わない。  サイモンに愛してもらえるなら。  抱きしめてもらえるなら、もう何も望まない。    宮殿に着くと僕は客室に通され、サイモンはルーカス様の部屋に呼ばれ、2人離れ離れになった。  いつもの手紙では『できることなら、レオナルドと会って話がしたい』と言ってくださっていたのに、僕はルーカス様に会えないまま、客室で呼ばれるのを待った。  ルーカス様とサイモンの話はすぐに終わると思っていたのに、サイモンはなかなか帰ってこない。  ルーカス様とサイモンは何をしているのか侍女にきいても、何も教えてくれない。  ふと嫌な予感がする。  僕の嫌な予感はすぐに当たってしまう……。  笑顔でサイモンが客室に入ってくることを願っていると、トントントンとドアをノックする音がする。 「はい、どうぞ」  そう答えると扉が開き、執事のような人が入ってきた。そして、 「ミカエル様。ルーカス様がお呼びです」  険しい口調で言われ、僕は一抹の不安を覚えながらルーカス様の部屋へと行った。 ートン トン トンー 「ミカエル様をお連れしました」  僕を呼びに来た執事が、室内にいるルーカス様に声をかける。 「入れ」  室内から聞こえてくるルーカス様の声は、テラスで話をした時の優しい声色ではない。  ドアが開き室内に入ると、そこには大きな窓を背にした所にルーカス様のデスクがあり、ルーカス様はそのデスクの椅子に座り、サイモンはデスクを挟んでルーカス様の前に立っていた。  僕はサイモンの隣りに立ち、マナーの先生に教わった通りルーカス様にお辞儀をし、挨拶をしようとした時、 「遠くに行くとはどういう事だ?」  なんの前触れもなく聞かれ、周囲の空気が一瞬にして凍る。 「それは、私が手紙に書いたことでしょうか……?」 「他になにがある?詳しく話せ」  鋭い視線に睨まれ、背中に冷たい汗が流れる。 「あの、それは……」  口ごもってしまうと、 「その理由は俺も聞きたい」  サイモンが無表情のまま僕の方を見て言った。 「どうしてルーカス様には、自分はレオナルドでミカではないと話したのに、俺には話してくれなかった?」 「え!?」  どう言うこと?  頭が真っ白になった。 「どうして、それを……」  もう、その言葉しか出てこない。

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