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第45話 恐れていたこと ②
「ルーカス様から聞いた。でもその前から気づいていた。|レオ〈・・〉俺が何も気づかなかったと思うのか?レオがミカの振りをしていること、気づいてなかったと思うのか?」
冷たい声色に視線を投げつけられて、体が凍ったように血の気が引き冷たくなり動かない。なのに鼓動はとてつもなく速い。
サイモンは僕がミカの偽者、レオナルドだと気づいてた!?
いつから?いつから気づいてた?
今までのことを振り返っても、サイモンは僕のことを疑う素振りはなかったのに……。
サイモンは僕が嘘をついていると気づきながら、僕をミカとして接してくれていたってこと?
なんのために?
僕が必死になって嘘をついていたから?
「遠くに行くってどういう事だ?番になりたいと言ってくれたのは嘘だったのか!?本当は俺と番になんて、なりたくなかったのか!?」
いつも冷静なサイモンが大きな声を出し、恐怖で体がビクッと震える。
「嘘じゃ……ない……」
嘘じゃない。
本当にサイモンと番になりたい。
けれど、あんな嘘をついてしまっていて、信用してもらえるはずがない。
「じゃあどういうことなのか、聞かせてもらおう。どうして俺と結婚したのか?」
サイモンの鋭い視線が針となって、全身に突き刺さるようだ。
答えなければ。僕がしてきた全てを、話さなくては。
全身がガタガタと震えているけれど、手足に力を入れてなんとか立ったままでいられた。
いつか言わないといけないと思っていた真実。
でもサイモンとの日々が幸せすぎて、本当のことを言えば全て失うと思うと言えなかった。
サイモンは僕にずっと嘘をつかれ、怒りしかないと思う。
何もかもが壊れてしまった。
サイモンを深く傷つけてしまったのは、僕だ。
「僕がカトラレル家と、もうすぐ生まれてくる僕の妹か弟を守らなければならなかった」
「オリバー家とカトラレル家との約束のことを言っているのなら、レオが『生き残ったのはミカで、死んだのはレオだ』と言い切った時、俺は結婚しなくても家同士の約束は守ると言ったはずだ。あの時、俺に本当のことが言えたんじゃないか?」
「……」
サイモンの言う通り、あの時、サイモンは家同士の約束を守ってくれると言った。
でも僕はそこでサイモンとの繋がりがなくなるのが、怖かった。
だから自分のことをミカだと言い張った。
たとえ自分が死んだことになっていても、サイモンのそばにいられるなら、それで構わないと思った。
「結婚式の夜、俺と番になれないと言ったのは?」
「サイモンの本当の婚約者はミカだったから」
あの時、本当にサイモンと番になりたかった。
けれど、僕はレオナルド。
ミカじゃない。
もしそのことにサイモンが気づいた時、サイモンはどう思うだろう?
ミカはどう思うだろう?
本当はサイモンの隣りにいるのはミカだったから……。
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