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第58話 お茶会 ①

 いつものように、部屋の大きな窓から園庭を見ていると、ノックもなく部屋のドアが開いた。  振り返ると、そこにはルーカス様がお一人で立っていた。  僕は何かしてしまったのだろうか?  自分の行動を考えながら、ルーカス様に頭を下げると、 「庭に出たいのか?」  唐突に聞かれた。 「え?」  この場合どう答えればいいのだろうか?  返事に戸惑う。 「本当のことを言えばいい」  ちゃんと僕のこと見ていなかったルーカス様が、今日は僕の顔をしっかりと見る。 「いつも窓から園庭を見ていると、庭師から聞いた。レオナルドも園庭に出たいか?」 「え?」  今まで『お前』としか言われていなかったのに、急に『レオナルド』と名前で呼ばれ、驚いた。  今日のルーカス様は言葉は不器用だけれど優しく、僕が文通をしていた時のよう。 「少しでいいので、庭に、出たです」  ダメだと言われるのを頭の隅において言った。 「ハーブティーは好きか?」 「ハーブティー……ですか?」  庭に出たいと答えたのに、その答えはもらえず、また違う質問をされる。 「はい、好きです」  迷いながら答えると、 「庭に出る用意しろ。俺は先に行っている」  ルーカス様が後ろで立っていた侍女に合図をし部屋を出ると、侍女たちは持ってきた新しいドレスを僕に着せていく。 「これは、何の用意ですか?」  いつも僕のことを無視し続けている侍女に、恐る恐る問いかけると、 「お茶会です」  めんどくさそうだが答えてくれた。  お茶会?  誰と?  そう聞きたかったけれど、今度こそ無視されるかもと思うと怖くて聞けなかった。  新しいドレスを見に纏い、侍女に連れられて向かった先は、いつも部屋の窓から見ていた薔薇のトンネルの中だった。  そこにはアフタヌーンティーセットがされていて、机の中央にはフルーツがふんだんに使われている一口サイズのケーキが三段重ねのスタンドに乗っている。その周りにはケーキ皿とカトラリー、ティーカップ、そしてガラスでできているティーポットには紫の花ビラがお湯の中で舞っている。 「どうだ気に入ったか?」  薔薇のトンネルの中からルーカス様が現れた。 「レオナルドはやはり紫が合うな」 「ありがとう、ございます……」  ルーカス様のこの変わりよう。まるで別人みたい。 「ルーカス様、お茶の用意ができました」  執事が声をかけと、 「ここがレオナルドの席だ」  ルーカス様が僕のために椅子を引いてくださる。 「ありがとう、ござきます」  どう接すればいいか、自分の行動が間違っていないかと、周りをキョロキョロしてしまう。 「そう怯えるな」  僕のおかしな行動に、ルーカス様がクククと笑い僕の目の前に座る。  

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