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第82話 愛とは ②

「レオ、ちょっといい?」  エマと領地の名産品を作ろうと、調理場にいたところにサイモンがやって来た。 「なに?」 「街に花を買いに行きたいんだが、花のことは詳しくなくて。それでレオの意見が聞きたいんだ」 「どんな花を探してるの?」 「花嫁のブーケにする花束なんだ」 「花嫁さんのブーケ作り。それはサイモンに任せられない。エマ、街に行く用意をしよう」 「行きましょ、行きましょ!」  いつもより元気なエマに手を引かれ、街に出る用意をした。  街に着くと、そこは祭りのように街全体に飾り付けられ、店先や二階の住居部分にも装飾されている。それに気のせいかもしれないけれど、街の人達がソワソワしているようにも感じる。 「ねぇサイモン。今日お祭りとか予定あった?」  書斎にある予定表にも祭は書かれてなかったはず。  「予定にはなかったが、急遽催しが行われることになったらしい」 「そうなんだ。だから街の人たちはソワソワしてるんだね」  僕がそういうと、なぜか街の人たちは僕から目を逸らす。   どうして逸らすんだろう?  そんなことを考えていると、 「ブーケ作りに行こうか」  サイモンが花屋を指差した。  僕は花屋が大好きだ。  だってそこにはミカが大好きだった花が、たくさん置いてある。  本当は自分でも育てたいけれど、花を育てるのは本当に難しくて大変。  何度枯らしてしまい、花に申し訳ないことをしたか……。 「花嫁さんはどんな花が好きなの?」 「聞いた話では、紫と青の花が好きだそうだ」 「紫と青か~。僕とミカが好きな花の色と同じだね」  たくさんある花の中から、メインが紫と青になるように花束を作る。  ドレス作りが得意だったミカだったら、ブーケも素敵に作るんだろうな。  ミカが花を選ぶ姿を思い浮かべると、ミカにも花束を作ってあげたくなる。 「サイモン、ミカのための花束も作っていい?」 「もちろん。きっとミカも喜ぶよ」  ミカと一緒に花選びをしている気分でブーケ作りをしていたら、あっという間にできた。 「できたよ」  僕がサイモンに手渡すと、 「じゃ次はケーキ屋に行こう。花婿さんがウエディングケーキを取りにいけないらしいんだ」 「それは大変!すぐにもらいに行かないと!」  街でも有名なケーキ屋さんに着くと、そこには豪華なウエディングケーキができあがっていた。 「凄い!こんなフルーツたっぷりのケーキ見たことないよ」 「私の力作です」  店主さんらが力こぶを作る。 「花嫁さんも花婿さんも喜ぶでしょうね」 「だといいんですけどね」  店主さんは自信なさげだけれど、絶対大喜びすると僕は確信している。  だって僕だったら、飛び跳ねて喜んじゃうよ。

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