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第1話
大切なものが、あんなにも呆気なく無くなってしまうなんて、
俺は...考えてもいなかったんだ。
「うおーい奏汰ぁ!今日クラスの奴らと合コン行くんだけど、お前も来いよ!!」
放課後、いそいそと帰り支度をしていた俺に上嶋は嬉しそうに話しかけてきた。
「えー...合コン?」
「お前彼女居ないんだろ!?今日の相手は逃すには惜しい相手だぞ~?なんと!あの西女の子達どぅえ〜す!!」
そう言いながら上嶋は自慢げにケータイに写る女の子達の写真を見せてくる。
「なっ!?すっげー可愛くね!?この子がマミちゃんでー、隣の子が凛子ちゃん!そんで一番左の子が~...」
「あーハイハイ。わかったわかった、うんOK。たまには遊ぶか。」
上嶋の言葉を食い気味に遮って、俺はカバンを肩にかけ直した。
上嶋はニヤリと笑って「そ〜来なくっちゃな!」と、俺の背中をバシバシ叩いた後、他のメンバーの元へさっさと走っていった。
(ふぅ...、合コン...ね。)
なんとなく、窓の外を見ながらため息をつく。外で走っている野球部を眺めていると、どこからかいつも虚しさがこみ上げてくる。
俺はそれをかき消すようにふるふると首を振って、少し早めのスピードで上嶋達の元へ歩いていった。
「やべぇ、キンチョーしてきた」
「恭子ちゃんまじ可愛くね!?おれ恭子ちゃんねらーい」
ガヤガヤと騒がしい俺ら一同は正直、廊下を歩いているだけでも目立っていた。
しかも、今から合コンで気合を入れているだけあってか、俺以外の奴らは皆制服をだいぶ着崩した状態でいたため、生活指導の鈴木に呼び止められた。
「おいお前ら」
上嶋達の「ゲッ」という声が微かに聞こえる。
「なんだその格好、下校だからってそれで注意されないとでも思ったのか。」
クラス名簿をトントンと肩に叩きつけているその教師。
正直、顔はいいがガタイがでかい為男子からは密かに怖がられていた。
「やだなぁ先生、俺ら今から合コンなの!んなぴっちり制服着てちゃあ、女の子たちに引かれるでしょ!」
上嶋が鈴木に詰め寄る。
だが鈴木はハァっとため息だけついて、上嶋の頭に手を置いた。
「威勢がいいのは結構だけどな、今すぐ指導室に連れてその合コンに行けなくしてやってもいいんだぞ。」
鈴木はニヤリと教師とは思えないどす黒い笑みを向ける。
威圧に負けて、上嶋は「うっ」と喉を鳴らして開けていた第二ボタンをしめた。
「そーそー、それでいいの。つか女はそんくらいで引きゃしねーよ。オラ、残りのヤツらも服装正せ。」
「チッ...なんだよ...」
皆はぶーぶー言いながら、先生の手前、仕方なく服装を正す。
その一連の流れをただただ見ていただけの俺に、先生はふと声をかけてきた。
「吉崎も行くのか?合コン。」
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