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第2話

「えっ...?」 なぜ、俺の名前を知っているのか、俺は部活にも入っていないし、先生に授業ももってもらっていない。 「行きますよ?なにか。」 なぜかひねくれた言い方になってしまったのは自分でも気づいていた。だが、あまり悪いとも思わない。 正直、「お前も行くのか」なんて今の俺には一番キツイ質問だから。 「本当に?」 何故かしつこく問いかけてくるその教師は真っ直ぐにじっと俺の目を見てくる。 (なんだ、この人...なにか知っているのか?) 俺が流石にムッとした顔つきになると、鈴木はハッとしたのか「あー...」と声を漏らす。 「いや、なんでもない。」 鈴木は少し目をふせって、低いトーンでそう呟いた。 「ハメ、外しすぎないようにな。」 顔を上げ、上嶋にニコリと笑って鈴木はスタスタと行ってしまった。 (結局何だったんだ...) 通り過ぎざま、先生と少し目が合ったが、俺はニコッと愛想笑いを向け、すぐに顔を背けた。 ーーーー... 「ったく鈴木のヤロー。こんな時くらい見逃してくれてもいいじゃねーか!!」 校門を出た途端、上嶋はブチブチと小言を並べしめたボタンを荒く外す。 「でもよー、鈴木って男子からはイマイチだけど、女子からは人気あるよなー」 「いやいや、男から見てもあの顔はカッコイイべ」 「ちきしょー!いい男なのが余計腹立つ!」 皆好き勝手話しているが、俺の耳にはあまり内容は入ってこない。 ただ、ぼーっとした意識の中で、俺はある一つの事が、頭から離れなかった。 (さっき目ぇあった時、先生...なんかちょっと俺に向けた目が冷たかった気がする...) 「?奏汰ぁ?どしたん」 俺の態度に違和感を感じた上嶋がキョトンとした顔で俺の顔を覗き込んでくる。 俺は 「いや?なんでも。」 と、愛想笑いを向けるのだった。 ー翌日ー 教科委員である俺は、国語教師にテキストを回収してくるよう事付られ、クラス全員分のテキストを抱えて、職員室の前で立ち尽くしていた。 (これは...マズイ。) 完全に塞がった両手、1冊50ページ程のテキストを35人分抱えた手はビリビリと痺れを切らしている。 ...そう。職員室のドアを開けられないのだ。 (足で蹴ってもいいけどなぁ...) だがそれをやってしまうと後々教師陣にガミガミ言われるのが目に見えている。 なにより。あまり目立ちたくない。 (よし。誰かに開けてもらおう!) 手がそろそろ限界を迎えそうだったので、辺りをキョロキョロしていると 「開けてほしいのか?」 昨日聞いた、あの低い声が背後から響いた。

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