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第3話

「あ。」 「なんだ、『あ。』って。職員室に用なんだろ?」 そう言うと鈴木は大きなあくびをしながら職員室のドアを開けてくれた。 「...ありがとうございます。」 「ん。」 ふと、昨日の冷たい目が俺の脳裏をよぎる。 あの目は一体、なんだったんだろうか。 先に職員室へスタスタと入っていった鈴木の背中を見ながらなんとなくその事を考えていると鈴木が俺に向かってちょいちょいと手招きした。 「...?」 「ぶはっ、なーに不思議そうな顔してんの。入るんだろ?クーラー逃げるから、早く入れ。」 優しく笑う鈴木にハッとした俺は早足で職員室に踏み込んだ。 「あ...ねー先生。手塞がっててドア閉めらんないや。」 そう俺が舌を出すと、鈴木はまた「ははっ」と微笑してドアを閉めてくれる。 (昨日のは...気の所為だったのか?) こうして普通に接されていると、昨日の冷たい目は俺の気の所為だったんじゃないかと思えてくる。 よくよく考えれば、この鈴木という教師は基本生徒には物腰柔らかいし、説教にだって、見ていて愛があるなぁとか思うほど。 持っていたテキストを棚に置いて、俺は鈴木に向き直った。 「先生ありがと。助かりました。」 「んー。」 自分の席に着いてクラス名簿を眺めている鈴木。俺はドアに手をかけて「あ。」と漏らした。 鈴木が不思議そうな顔でこちらを見る。 「そーいや先生。俺先生と話したことあったっけ?」 うっすら昨日感じた疑問をぶつけてみた。 もしかしたらどっかで接点あったのかも、位に考えていた俺だったが、 その軽い考えは鈴木の真剣な表情によってかき消された。 (え...、俺、なんかマズイこと言った?) 「お前...覚えてないのか?」

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