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第4話

一瞬、この男が何を言っているのかわからなかった。 (覚えてない...?てことは、やっぱ俺と鈴木どっかで接点が...?) 夏の暑さのせいか、俺の額を変な汗が伝う。 「え...会った...け?」 (いやどこで?) 心底心覚えのなかった俺は、ははっと愛想笑いをして首を傾げた。 「...。」 鈴木は何かを少し考えた後、ふぅ、とため息をついてさっきまでの優しいえみを浮かべる。 俺は、 この感じを知っている。 (意識的に...感情を切り替えている感じ...) なぜこの教師がそんな複雑そうな表情を見せるのか、 本当に思い出せない俺はただただ、鈴木を見つめる事しかできない。 「なんだぁ、先生ショックだなー。あ、そういや、昨日の合コン、上手くいったのか?」 おちゃらけたテンションで、鈴木はそう続けた。 「えっ、」 俺は少し、ホッとした。 話題を逸らされたという怒りよりも、あのなんともいえない奇妙な雰囲気を抜け出せたと、安堵した。 「あー、あはは、いや、誰ともうまく行きませんでした。アドも交換してないっす。」 自分がした質問は多分、あの教師にとって触れてはいけないものだったのかもしれない。 (なんか...モヤモヤする) 「えっ、まじか、吉崎イケメンだし、モテるだろ??もったいねーなー」 (なんか...先生、意識的に俺に壁を作ってる気がする) 「えーいや、イケメンじゃないっす。全然。」 (つかなんでこんな会話してんの?結局、俺らは接点あったの?) 叫びたい気持ちをぐっと押し殺しながら、俺は開きかけていたドアを開けた。 「んじゃー失礼しました。」 (このまましつこく聞き続けてもなんかやばい気がする。聞くタイミングは追々伺っていくか。) そんなこんなで、俺が職員室を出ようとすると 「吉崎、今日、学校終わったら東棟3階の個人面談室に来い。」 俺は静かに、その男の方に振り返った。 「あの質問...その時に教えてやるよ。」

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