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第3話-12 「抜いてみたら?」

「相手が男だから、変?」 その言葉に、秋は慌てて返事をする。 「や、その、俺はその…今までその、女の子が好きだったし…そんな、男に…こ、興奮…っていうか、意識したことなんてないから」 「でも実際、したんでしょ?」 「それは…そうだけど…でもそれは…その、春が…特別、綺麗だからっていうか…」 すると松山は言った。 「俺はどんな綺麗な女優でも、女だったら抜けないけどな」 そ、それは…と秋が何か言いかけて、そして大きなため息をついて言った。 「どうしよう、あっくん」 「何がどうしよう?もうしょうがなくない?」 「そうだけど…」 松山は項垂れる秋に尋ねた。 「秋は春とどうなりたいわけ?」 どうって…と秋は少し考えた後、言った。 「…仲良くなりたい」 その返答に、松山は思わず吹き出した。 そして、言った。 「だったら空回りしすぎでしょ、今完全に不審者だからね」 そう言って春に対する秋のたどたどしい態度の真似をする。 秋はそれにやめてよ…と弱く言い、顔を隠した。 そして、もうどうしたらいいかわからない、と泣きべそをかく秋に、松山は仲良くなるためには秋のことを知ってもらうのって大事じゃない?と言った。 「自分のライブに春を招待したら?」 「ライブ?」 「なんかないの?」 秋は2ヶ月後に開催を予定している自身のワンマンライブを頭に思い浮かべた。 「誘ってみたら?」 松山にそう言われ、秋は小さく頷いた。

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