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第6話-6 寝起き

そう言ってすぐ、秋は自分が割ととんでもないことを言ってることに気付く。 「あ、い、いや、あの...嘘、嘘、俺も今日は...起きてようかな」 そう秋が俯いて言い出したを見かねてか、春が言った。 
 「分かった、広いから二人、寝れると思うよ」 ―― セミダブルのベットに二人で並ぶ。 静かな空気に耐えきれなくなり、秋はなんでもない話をし出した。 いつもよりワントーン低い落ち着いた、
でも優しい声でその一つ一つに反応してくれる春。 「普段はどうやって起きてるの?」 「寮の同室の子が起こしてくれる」 「あー、冷泉君が?え、でもあの人も朝弱そうなのに」 「朝強いんだよ」 「そうなんだ!」 「...知ってくれてるんだね」 「え?」 「いや、寮の話あんまり...したことなかったと思うから」 その一言で、ハッと気づく。 秋はデイプロ関連の動画を見漁っており、そして
今ではラジオまで欠かさず聴いていた。 そのおかげで、
春の同室である子のこともすっかり知っていたのだ。 が、そのことを春には話していなかったし、
それがバレてしまったことに”しまった!!!”と秋は思った。 そして秋は必死に言い訳をする。 「あ、いや、ほら、そのさ、ほら、音楽の勉強のためにさ、その...デイプロとか見ててさ!それでたまたま、たまたま知ってて」 
春はそれにあまり突っ込まず、そうなんだ、と言った。 そして秋は、ま、まあ...それでたまたま...春のライブも度々見てて、と続けて言った。 「本当、歌もダンスもめっちゃ上手くて...なんか、プロ...なんだなって、凄い思う」 すると春はふっと息を吐き、笑って言った。 「秋に言われると嬉しい」 「え、な、なんで...?」 
「秋、歌上手だから」 「あ、ああ...あり...がとう」 そして春は続けて言った。 「曲も自分で作ってるんだもんね、凄いね」 
秋はその言葉に"いやあ・・・"と呟き、少し顔を赤くした。

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