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第9話-8 優越感

「それにワンマンもさ、結局誘わなかったんでしょ? 去年は春だけ誘って春宛のラブソング歌ってさ、その後”勘違いだなんて勝手に決めつけるな!”って怒るほど熱烈な告白までしてさあ。 そりゃ一年であっけなく別の子誘ってたって分かったら、なんだよ、とは思うんじゃない?」 

「いや俺は誘ってないよ、あれは白石さんが...」

 「いやいや、それ春には分かんないじゃん」 「いやそうだけど…春は別に、俺のこと好きじゃないし…」
 「それも分かんないよ」 「へあ?だから俺振られてるって…」 

「いやいや、あれから一年経ってるし。それにあの時より格段に仲良くなってるわけでしょ? わざわざ忙しい中時間作って秋の手料理なんか食べにきてくれてさぁ。」 そして松山は続けて言った。 「春の中で、何か気持ちの変化が起きてるかもしれないじゃん」 
その松山の言葉に、最近の春の行動に想いを馳せる。 確かに前よりは春は自分に気を許してくれている感じがあった。 でも...と秋はそれに確証が持てない。 

そして、この間のことを思い返す。 
泊まるかどうかの選択を春に委ねた時、春は帰る選択をした。 秋は、それが答えだと思った。 もし自分が相手を好きで、そしてその相手も自分のことを好きだろうと思える人が「泊まっていけば」と誘ったのなら、秋だったら迷わずその誘いに乗る、と思ったから。 春は秋をやはりそういう風には見ていなくて、
ただ友達としてそばにいることを許してくれている。
 そして、春なりの気遣いで、"友達"でいれる距離感を図ってくれている。 そんな人が、自分の新たな恋の予感めいた物を気にするはずが無い。 そうしてしばらく考えを巡らせて黙り込んでいた秋に、
「まあ体調気遣う連絡くらいはしても良いんじゃない」といい、
松山は電話を切った。

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