81 / 209
第10話-3 行きたかったな
時刻は23時。
こんな時間に誰・・・?と恐る恐るドアスコープを除くと、そこには春がいた。
え!?!?!?と大きな声をあげ、秋は咄嗟にドアを開ける。
突然激しく開いたドアに春は一瞬のけぞる。
「わ、ご、ごめん!」
「あ、いや。こっちこそ急にごめんね」
秋は自室にいて気づいていなかったが、外は大雨だったらしい。
春は髪も服も濡れていて、手元には傘がなく、
ただ携帯だけを握りしめていた。
上がって上がって、と春を部屋にいれる。
洗面所からタオルを何枚も持ってきて、春に手渡す。
春は”いつもの”ようにふわりと笑い、一枚で大丈夫、ありがとう、と言い、
秋からタオルを受け取って髪を拭いた。
春は玄関から先に来ようとはしない。
秋はそんな春を一度は呼ぶこむが、ここで大丈夫、と春は断る。
断られたことで、秋はまた不安がよぎる。
やっぱりこの間、泊まるように誘ったのを、
春はよく思っていないんじゃないか。
秋は思わず俯いた。
ともだちにシェアしよう!

