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第10話-6 行きたかったな
そしてそのまま、嫌じゃないならだけど、シャワーしたら?髪も服もそんなずぶ濡れだし・・と秋は提案する。
すると春はじっと秋を見つめ、
こくりとうなづき「じゃあ借りるね」とシャワーへ。
秋は妙な高揚感があった。
春が自分のことを気にしてわざわざ、こんな雨の中、
たった一本の電話の内容が知りたくて、駆けつけてくれた。
ふと窓を開ける。
大粒の雨が激しく降り注いでいる。
その時、空が明るく光り、遅れて大きな雷の音が響いた。
少し開けただけなのに窓際は水浸しになり、秋は急いで窓を閉める。
すると春が部屋に戻ってきた。
秋が外の様子を見ていたことに気づき、
「シャワーありがとう」と言ったあと、
「でも帰る時また濡れるだろうな」と小さく笑った。
秋は、「嫌じゃないなら」と声を上げた。
春がこちらを見ている。
「嫌じゃないなら・・・
雨が止むまで待ってたら」
すると春は「うん、ありがとう」と小さく頷いた。
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