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第11話-2 嘘つき
「ベッドあるのに使わないともったいないよ」
「春がベッド使わないなら俺も使わない」
「狭いよ」
「それは春のせいだから。春がベッドに行けば解決する!ほら!」
微笑みながらも少し困ったような表情を浮かべた春は、
そのままふっとソファにもたれ込んだ。
そして顔を少し秋の方に向け、くっと眉毛を下げて目を細め、
「このソファは譲らない」と言った。
秋はその表情とセリフにあはは、と吹き出し笑う。
「何でよ〜」と聞くも、春は変わらずその表情のまま秋を見ている。
秋も観念し、春と同じようにソファに持たれ込む。
そうして同じように少し春の方に顔を向けた。
「明日何時?」
秋は春にそう尋ねた。
「6時くらいにここを出たらいいかな」
「じゃあ5時には起こさないと」
「あはは、早くない?」
「いや、念には念を入れないと」
「大丈夫だよ、起きてるから」
「ダメだって。ほら、さっきくしゃみもしてたし。ちゃんと寝とかないと本当に体調崩しちゃうよ」
だからほら、と秋はベッドをぽんぽんと叩く。
春は何度か瞬きをした。
その仕草を見て、秋はふっ、と笑う。
「何?」
春は尋ねる。
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