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第12話-5 知りたい

そっと布団に潜り込む秋。 
春は背を向けたまま、
ただ秋のスペースを作るように少し端に寄った。 布団の中は春の体温で少し暖かかった。 春の背中を眺めながら、秋は言葉を探す。 これだけ近くにいるのに、春の気持ちが明確に分からない。
 期待と不安が渦巻く。 「…知りたい」 「春が今、何を思ってるか、知りたい」 秋の口から出たのは、嘘のない、シンプルな言葉だった。 秋は春の返事を待つ。
 春はただ息をして、じっと何も答えない。 秋はただ、それ以上何も言わず、春の言葉を待った。 すると春が、ゆっくりと起き上がった。 そして、ベッドに腰掛けたまま、
窓の方――秋に背を向けたまま、静かに言った。

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