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第13話-3 キスの後
あの日――春とキスをした日――から、
秋は春に話しかけることも、
個人的に連絡をしたりも、
そして家に誘うことも、しなくなっていた。
それはそんな春の多忙な様子を見て、というのもあったが、
大きな理由はそれではなかった。
秋が話しかければきっと春は、みんなにそうしてるみたいに、
優しく微笑んで応えててくれるだろう。
でも秋は
、まるであの夜のことがなかったことにされることが、
どうしても嫌だと思った。
そして加えて、例えば家に誘い、
忙しいことを理由に断られたとしても、
秋はそれを素直にそう受け止められない自分がいることを分かっていた。
そして万が一春が来てくれたとしても、
秋はその時何を話していいか、全く分からなかった。
_____怖かった。
そんな秋や、秋と春の様子を見て、松山は何か察しつつも、
特に何も聞いてこなかった。
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