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第26話-8 どうしたいか言って

「俺ね」

 「うん」 

「…何回も春で抜いた」



 「…ごめんね」 
秋が情けない声でそう言うと、春は鼻先から小さく息を漏らして笑った。


 そして秋は腕を緩め、春の顔を見つめる。 


「俺…出来るよ」

 「したいよ、春と」

 「友達も…クラスメイトも…知り合いもほんとは嫌だ」


 「…春は?」


 すると春は目を伏せ、何度も瞬きをした。 
そして言った。

 「…いいの?」

 その言葉に、秋は言う。


 「そうじゃなくて」



 「春がどうしたいか、言って」



 春は秋を見つめたまま、何度もまた瞬きをした。

 そして、小さな震える声で、
でも、じっと秋を見つめて確かに言った。




 「……付き合ってくれる?」




 その言葉に、秋は眉を下げて目を閉じた。
 そして、うん、うん、と何度も頷いた。 

再び涙を流し始めた秋に、
春は優しい顔でその涙を拭う。


 「ごめん、俺泣いてばっかりだ…」

 「ううん」 

「春しんどいのに」

 「ううん」



 「好きだよ」 

再びそう言った秋に、春は眉を下げ、
そして静かに秋に顔を寄せ、そっとキスをした。

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