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第28話
(夜・レストラン)
グラスの中で細かい泡が立ちのぼる。
料理の香りに包まれて、
少し緊張した空気もデザートが出る頃にはすっかりリラックスモード。
タカヤが小箱を取り出す。
「愁。昨日の言葉、俺なりの答えを渡させて」
開かれたのは、艶やかな質感の革ベルトに、落ち着いた文字盤をもつ腕時計。
「……俺と一緒に、これからの時間を刻んでほしい」
愁の目が一瞬揺れ、すぐに真剣な光を宿す。
「……バカ。そんなの、答えは決まってる」
腕に時計を嵌められた瞬間、胸の奥で何かが確かに結ばれた。
タカヤは少し茶化すように笑う。
「これで遅刻したら俺のせいにするなよ」
「……w照れてるのかよ。らしくないじゃん。」
互いの視線がぶつかり、ふたりは声を上げて笑った。
ふたりの腕にはお揃いの腕時計。
この先も一緒に時を刻むと改めて心に誓った夜だった。
(エピローグ)
レストランを出る夜風は少し冷たい。
でもふたりの手は離れない。
愁は心の中で呟いた。
──一緒に生きていこう。
昨日言葉にした決意が、今は確信に変わっている。
タカヤの横顔を見ながら、自然に笑みがこぼれた。
「まだまだ、これからだな」
ふたりの未来は──ここから始まっていく。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
愁とタカヤの恋は、まだ始まったばかり。
今回はここで幕を下ろしますが、続編でまた二人に会える日を楽しみにしています。
次の物語も一緒に見届けてもらえたら嬉しいです。
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