28 / 28

第28話

(夜・レストラン) グラスの中で細かい泡が立ちのぼる。 
料理の香りに包まれて、 少し緊張した空気もデザートが出る頃にはすっかりリラックスモード。 タカヤが小箱を取り出す。
 「愁。昨日の言葉、俺なりの答えを渡させて」 開かれたのは、艶やかな質感の革ベルトに、落ち着いた文字盤をもつ腕時計。
 「……俺と一緒に、これからの時間を刻んでほしい」 愁の目が一瞬揺れ、すぐに真剣な光を宿す。
 「……バカ。そんなの、答えは決まってる」 
腕に時計を嵌められた瞬間、胸の奥で何かが確かに結ばれた。 タカヤは少し茶化すように笑う。
 「これで遅刻したら俺のせいにするなよ」 「……w照れてるのかよ。らしくないじゃん。」
 互いの視線がぶつかり、ふたりは声を上げて笑った。 ふたりの腕にはお揃いの腕時計。 この先も一緒に時を刻むと改めて心に誓った夜だった。 (エピローグ) レストランを出る夜風は少し冷たい。
 でもふたりの手は離れない。 愁は心の中で呟いた。 
──一緒に生きていこう。
 昨日言葉にした決意が、今は確信に変わっている。 タカヤの横顔を見ながら、自然に笑みがこぼれた。
 「まだまだ、これからだな」 
ふたりの未来は──ここから始まっていく。 おわり 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 愁とタカヤの恋は、まだ始まったばかり。 今回はここで幕を下ろしますが、続編でまた二人に会える日を楽しみにしています。 次の物語も一緒に見届けてもらえたら嬉しいです。

ともだちにシェアしよう!