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第45話 エピローグ

 京子は、二年目のボーナスで購入したソファの上にどさりとカバンを置いた。夜勤明けの体を、すっかり京子の体に馴染んだそのソファへと埋める。  肩の凝りをほぐすように、何度か上下に動かす。昨日は新人医師を励まし、落ち着かせながら、なんとか急患を乗り切った。体もメンタルも休息を求めていたが、脳だけがソワソワと落ち着かない。  京子は冷蔵庫から冷やしていた発泡酒を取り出すと、プルトップを開けた。ぷしりという小気味いい音が心を潤す。  京子は缶を傾けながら、届いていた郵便物を仕分けていく。順調に動いていた手がふと止まる。  一通のエアメール。  京子は缶を置くと、はさみで丁寧に封を切った。エアメールは1㎝ほどの厚みがあった。厚みの正体は写真だ。    京子は中身を取り出すと、一枚一枚を丁寧に見ていく。京子は全ての写真を見分し終えると、部屋の本棚から一冊のアルバムを取り出し、収めていく。最後に今日の日付をラベリングして、本棚に戻した。  アルバムは6冊目に突入していた。近いうちに未知子さんに会いに行こう、と京子は思った。新しいアルバムを手土産に。  京子は、手紙に同封されていた、便箋と言うにはあまりにお粗末な、二つに折りたたまれた紙を開いた。 『インドにも美しいものがたくさんあります。いつか京子さんにも見てほしい』  京子はその文面を表情の読み取れない顔でしばらくの間眺めていたが、缶に残っていた液体を一気に飲み干すと、その紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。 「バーカ」  言って、京子は可笑しそうに笑った。

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