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14.「これが僕らの初恋だから」

 三日目の最終日は班ごとの自由行動の日だ。夕方に新大阪駅に集合するまで好きなところに行ける。  僕たちはサッカー漫画の聖地を回り、限定グッズを買う予定をたてていた。が、野元さんたちは朝食を食べて荷物を預けたら僕と那生を置いてさっさと行ってしまった。  「待って、僕たちも行くよ!」  「二人の邪魔はできないよ。グッズはちゃんと買って来るから!」  「野元さん!」  目にも止まらぬ俊敏さで三人は学年一早くホテルを出て行ってしまった。  「せっかく一緒に調べてたのに」  「あぁ……気を使わせたかな」  「なにが?」  「野元たちにあとでちゃんと礼をしような」  「うん?」  よくわからなかったけど、予期せず二人きりになれて嬉しい。しかも大阪だ。そうそう来れない場所なのでわくわくする。  「今日どうしよっか」  「みんなみたいにテーマパークもいいよね」  よくCMでみかけるテーマパークも魅力的だが、確か事前にチケットを申請しなければならない。直前に行くのは難しいだろう。  「じゃあ俺にプラン任せてもらってもいい?」  「うん。もちろん」  那生が手を差し出してくれたので僕はおずおずと指を掴んだ。まだ学校の生徒が多くいる中、手を繋いで歩くのは緊張する。  「あ、那生」  駅へ向かって歩いているとテーマパークに行く河野さんたちグループと会った。山内くんたちもいて、僕たちが手を繋いでいる姿を見て驚いている。  「河野たちはテーマパーク行くんだっけ?」  「そうだよ」  「じゃあお土産よろしく」  「……あの!」  通り過ぎようとすると河野さんに呼び止められた。彼女の金色の髪が稲穂のように揺れている。  「お幸せに!」  河野さんらしい飾り気のない言葉に僕と那生は目を合わせた。  きっと自分の気持ちに折り合いをつけて、悩んでだした彼女なりのエールなのだろう。  僕は繋いだ方の手を青空に向かって掲げた。  「うん!」  河野さんたちの視線を背中に受けながら僕たちは歩き出した。

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