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第90話

「お困りのようでしたら、僕がお相手いたしますので」 「うっ……。い、今は、考えさせて……」 「分かりました。お声がけいつでもお待ちしております。あ、何かあったときのために一応潤滑油置いておきますね」  そう言ってハーリーは、ピンク色の液体が入った瓶を置いた。問題はないだろうけれど、身体に悪そうな色をしている。 「では、今日の診察は以上となります。次は三日後にお伺いします」 「ありがとう……」  失礼します、と言いながらハーリーは立ち上がって、部屋から去っていった。  エドワードは瓶をじっと見つめながら、これを使うことがないようにしたいと思った。 「殿下」  すると、ロドルフが話しかけてきた。エドワードは、はっと顔を上げた。 「ど、どうしたの?」 「お召し物の方失礼いたします」  ロドルフはエドワードの前でしゃがんで、シャツのボタンをとめていった。診察のために外していたことをすっかり忘れていた。 「あ、ありがと……」  すぐに離れていったロドルフだが、エドワードに顔を向けたくないような動きだった。先ほどのハーリーの話が気まずかったのだろう。

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