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村に戻ると、既に何人かの村人たちは無事に回復して再建作業に取り掛かっている所だった。あれほど満身創痍で倒れていたというのに、彼らは随分とタフらしい。
「アルファ様! 姿が見えないので心配していました!」
俺の姿を見つけた村人たちが集まって来る。皆あれほど苛烈な魔王の攻撃を受けてボロボロになっていたにもかかわらず、第一に俺を心配してくれている。
この村に住む魔法使いたちは、皆俺の事が大好きなのだ。何故なら全員が俺の妻で、俺はそんな村にやって来た総攻め主人公だからだ。
安心してくれ、俺はこれからハッピーエンドを掴みに行くからな。心の中で村人たちに宣言しつつ、俺は皆へと訊ねた。
「魔王が帰って行ったのはどの方向だ? どっちに行けば魔王に会える?」
俺の問いに対して村人たちが一斉にざわつく。この世界において魔王という存在は、定期的にやってくるだけの存在だったのだ。ずっとこの村では週に一回、決まった日時に魔王の襲撃を迎え撃つばかりだったのだ。逆にこちらから魔王に襲撃を仕掛けようなど、彼らは微塵も思ってもいなかったのだ。
「あっちの方ですけど……ただ、すごく遠い所にあるので、箒に乗って飛んで行っても何日もかかると思いますよ。アルファ様が望むのであれば、あなたを後ろに乗せて箒を飛ばす事も出来ますが、何日もかけて向かうよりは一週間後の襲撃に備えた方が良いと思います」
村人の一人が西の空を指差しながら、魔王の居住地を教えてくれた。
確かに、箒で飛んで数日もかかる遠い地に魔王がいるのであれば、毎週必ず決まった日にやって来る魔王の襲来を待つ受け身の姿勢になってしまっても仕方がないのかもしれない。彼らは皆、この世界では受けなのだ。思考の傾向が受け身にってしまうのも当然の事なのかもしれない。
俺は隣にいるトーゴを見やる。トーゴは俺の意思を組み、コクリと頷いた。
西に向かって迷わず歩き出した俺とトーゴに村人達が動揺する。村中に散乱する瓦礫の中から少し大きめの板切れを拾った俺の隣で、トーゴが指先を宙に向けた。
「何をされるつもりですか、アルファ様? トーゴも、いったいどうしたんだい?」
ざわつく村人たちは皆、俺とトーゴを素直に心配してくれているようだった。心優しい彼ら一人一人に笑いかけ、すぐに帰るよと約束する。
「どちらに行かれるんですか?」
不安気な声が上がる。俺はトーゴの腰を抱き寄せ、可愛い妻たちを安心させるように彼ら全員に笑みを向けつつ板切れを構えた。
「ちょっと、次の濡れ場まで」
そう俺が行き先を告げると同時にトーゴが西の空に向けて指を振る。太い水柱が迸り、遠く遠く西の空へと一本の水の道を作る。
その水流に板を載せ、トーゴと共に素早く飛び乗る。太く激しい魔法の水柱に乗った板が、七色の虹を飾りながら西の空へと真っ直ぐに向かう。
小さくなっていく村人たちの歓声が足元に聞こえる。俺はしっかりと板を掴み、片腕でトーゴの体を固く強く抱きしめた。
トーゴは水柱の勢いを自在に操り、天空を行く即席の船は鳥よりも箒よりも早いスピードで一直線に西へ西へと飛び続ける。
「なあ、アルファ。俺、自分の魔法がこんなに役立つ日が来るなんて思わなかったよ」
トーゴの声がはしゃいでいる。ヤカン一杯分の水しか出せずに劣等感に落ち込んでいた、あの頃の彼の姿はどこにもない。
即席の船はどんどん進み、徐々に空が暗くなる。きっともう、魔王の居住地に近いのだろう。
水の勢いを弱めて貰い、ほどよい所に着陸する。俺は周囲をぐるりと見まわし、そして大きく声を上げた。
「魔王、いるか! いたら出て来てくれないか!」
薄暗い森の静寂の奥に俺の声が吸い込まれる。魔王城と呼べるような建造物の気配は微塵もなく、もしかすると全く見当違いの所に来てしまったのではないかという不安が生じる。あっちの方、というざっくりとした方角ばかりを頼りに西へ西へと飛んできたのだ。この呼びかけに反応して貰えなければ、どうしたら良いか分からない。
しかし、そんな不安は杞憂に終わった。森の奥から藪を掻き分け、ごそごそと魔王が出てきたのだ。
トーゴの体が緊張する。幾度となく村を焼野原にされた宿敵との遭遇なのだ。怯えるのも仕方がない。
「ふはははは、遠くからよく来たな下等種族よ!」
ひっそりと静かな森の中に、魔王の高らかな笑い声が響く。近くで見ると、独特な衣装のその異様さが一層はっきりと目に見える。
俺はそんな魔王に対してペコペコと頭を下げて両手を差し出し、握手を求めた。
「出てきてくれてありがとう、魔王。会えなかったらどうしようかと思ったよ」
「えっ……? ふん、下等種族にしては礼儀正しい男よ」
高圧的な態度で俺を見下しながらも、魔王はしっかりと俺の手を両手で握って丁寧に握手に応じてくれた。
対面してまだ数分も経ってはいないが、俺は既にこの魔王という男についてなんとなく理解し始めていた。
「ところで魔王、あなたに聞きたい事があるんだ。少し話をしても良いかな?」
「話とな? くだらん。だが、聞いてやらない事もない。言ってみろ」
「ありがとう魔王。じゃあちょっと、そこに座って話そうか」
手頃な岩場を指差しながらそう言うと、魔王はフンと鼻を鳴らしながらも俺が指差した岩へと向かって素直にそこに腰を下ろした。俺とトーゴも各々岩へと腰かける。
布地の少ない魔王の衣装では岩で尻を痛めるのではないかと少々心配に思ったが、とりあえずは彼との対話を優先する事にした。
「魔王は、どうして村を襲うんだい?」
「フンッ、そんなの俺の勝手だろう」
「世界を征服しようとしているのかい?」
「当然だ。俺はこの世界を統べる王となるのだ」
「世界を征服したらどうするんだい?」
「無論、世界を統べる王となるに決まっているだろう」
「世界を統べる王って何だい?」
「愚問だな。世界を征服した王の事だ」
得意気な表情で魔王が笑う。俺は確信した。
――彼には、明確な設定がない。
総攻めボーイズラブの世界の悪役として漠然と生み出された彼は、あまりにも設定が緩かった。
藪の中からごそごそと出てきた所を見ると、もしかするとしっかりとした住居すら与えられていないのかもしれない。
彼は魔王という役職であり、村を襲撃して皆を困らせるだけの存在なのだ。強力な魔力で村の魔法使いたちを襲撃する脅威的なラスボスでありながら、それ以外の設定を十分に作られていないがために、彼は薄っぺらい設定の中でやれるだけの『魔王』を従順にやっているのだ。
そう確信すると、目の前で得意気に笑いながらふんぞり返っている彼の事がとても気の毒に思われ、そして妙に可愛げがあるように感じられた。
俺は未だに緊張してカチンコチンになっているトーゴの耳元に顔を寄せ、そっと囁きかけた。
「トーゴ、愛だ。俺は今から、愛の力でこの魔王を攻略する」
エッとトーゴが目を丸くする。しかし俺の力を心の底から丸ごと信じてくれているトーゴはすぐに力強く頷き、「俺も協力するよ」と頼もしい事を言ってくれた。
一方、目の前で突然ヒソヒソと俺達が内緒話を始めた事に魔王は機嫌を悪くしていた。
「下等種族たちよ、なぜ俺を仲間はずれにするのだ」
どうやら彼は、内緒話に自分も混ざりたかったらしい。のけ者にされた事に不満を抱く魔王に俺は笑いかけ、ならばと彼との距離を詰めてその耳元に唇を寄せた。
「ごめんね、魔王。もう仲間はずれにしないよ。一緒に仲良くおしゃべりしよう」
「ん……っ」
ひくん、と魔王の肩が震える。見たか魔王よ。これが総攻めの囁きだ。
愛らしい反応を見れた事に俺が満足する一方で、魔王は自分の見せた反応に戸惑いを感じているようだった。
俺は鋭い感性で見抜いた。彼もまた、村人達と同様に童貞であると。
「ねえ魔王、少し聞きたいんだけどさ。この衣装は、魔王の好みなのかな?」
「衣装……? 好みな訳があるか。これしか着る物がないだけだ」
「へえ、そうなんだ……すごく不思議な服だよね」
あまり設定のない彼は、この世界が用意した衣装を素直に着ているようだった。俺は彼の網タンクトップへと手を這わせる。魔王は突然の俺のボディータッチに動揺し、「えっ、あっ?」と高圧的な態度をほどいて狼狽した。
「どうして全部が網じゃなくて、乳首の部分だけ隠してあるんだろうね。面白いなあ」
「あっ、やめろ下等種族よ、何をしているんだ、んっ」
薄い布地の上からくりくりと乳首を指先で転がすと、動揺した魔王は顔を赤らめ慌てて逃げ出そうとする。しかしトーゴが魔王の腕をがっしりと掴み、「大丈夫だよ、怖がらないで」と優しく彼の動揺を宥めた。
「このショートパンツも、すごくエッチだと思わないかい? おちんちんの形が、こんなにくっきり丸見えになってる。もしかして、魔王は人からおちんちんを見られたいのかな?」
「そんなわけあるかっ、あっ、やめろ、あっ、やめて……っ!」
玉と竿の凹凸が微塵も隠される事なく露わになっている魔王の股間を着衣越しにするりとなぞる。そのままショートパンツのサイドに指を滑らせ、網で成されたその部分から透け出る肌をやんわりと撫でた。
「ノーパンで、こんなにちんちん丸見えの服を着て……すごくエッチな子だね。こんなにエッチな服を着て、魔王は恥ずかしくないのかい?」
ビクビクと魔王の体が震える。設定が希薄な彼は、孤高の存在としてずっとあり続けたのだろう。この世界において村を襲撃する他に役割を持たない彼は、週に一度の襲撃の日の他にはずっと孤独を抱えながらこの森で暮らしていたのだろう。
突然現れたよく分からない人間に、無遠慮に体をまさぐられる。そんな経験は全くの初めであるだろうし、こんな事をされるだなんて夢にも思わなかっただろう。
「こんなエッチな服着てるの、恥ずかしくないの?」
孤高の悪役。おそらくプライドも人一倍高いであろう彼の羞恥を煽るように、耳元にしっとりと囁きかける。ただでさえ自己主張の激しい魔王の股間は徐々に芯を持ちつつあり、スケベなショートパンツの中で一層激しく元気いっぱい己の存在をアピールしている。
魔王は背中を丸めて小さく体を震わせながら、ヒンッとか細い悲鳴を上げた。
「……恥ずかしいに! 決まっているだろう!」
涙声で魔王が叫ぶ。特に設定もなく、訳も分からず謎のセクシーな衣装を着せられている彼は、意外としっかり自分の服装に恥じらいを抱いているようだった。
「こんな、こんなに性器が丸見えで、下着もなくて……っ、それに、なんだこの網の服は! どうして俺以外の奴らは皆普通の服を着ているのに、どうして俺だけこんな網を着ているのだ! 何も隠せないではないか! お前にはこの苦労が分かるまい! あの村の魔法使いには、氷雨や風を操る者がいるだろう! アレすごく寒い! こちらはほとんど裸なのだぞ! 酷いと思わぬか! 寒いのはいやだ! やめてほしい!」
半泣きで訴える魔王の主張を、俺はとても哀れに思った。いったい彼がなぜこんな目に遭わなければならないのだろうかと、ただただ気の毒に思った。
彼は自らの意思で村を襲撃している訳ではない。魔王だから、そういう使命を持っているから、運命に従い真面目に村を襲っているだけなのだ。
変な衣装を支給され、激しい羞恥を感じながら恥ずかしい衣装を身に纏い、住居も与えられずに日頃は藪の中に住み、週に一度の仕事をこなし、希薄な設定に則った『魔王』を一生懸命にやっているに過ぎないのだ。
俺は魔王を抱きしめ、網ごしに優しく背中を撫でた。
「恥ずかしかったね、大変だったね。でも、もう大丈夫だよ。俺が来たからにはもう大丈夫。何を言っているんだと思われるかもしれないけど、俺はこの世界の主人公なんだ」
「何を言っているんだ……?」
ゆったりとしばらく背中を撫でて魔王を落ち着かせた俺は、そのまま彼の頬に手を寄せ、チュッと軽くキスをした。
魔王の体が硬直する。真っ赤になった彼の周囲に、いくつもの疑問符が飛び交っているのが目に見える。
トーゴはそんな魔王の反応を楽しそうに眺めながら、よしよしと優しく魔王の頭を撫でていた。
「魔王さん、アルファに任せてれば大丈夫だよ」
「はっ……? 何が……? あっ」
困惑する彼を抱きしめ、真っ赤に染まった魔王の耳殻に唇を寄せる。薄い耳たぶにチュウッと吸い付き、舌先でチロチロと小さくくすぐる。
「あっ、なんだそれ、あっ、いやだっ」
俺の腕に閉じ込められた魔王の体が痙攣する。たった一度の魔法攻撃で村に大ダメージを与えて来る恐ろしい魔王でありながら、随分と快楽には弱いらしい。
耳殻をまるごと口に含んでじゅるじゅると音を立ててしゃぶると、魔王は脚をバタバタさせて激しく悶えた。卑猥なショートパンツの中心はパンパンに膨れ、苦しそうに悲鳴を上げている。
「トーゴ、魔王が苦しんでるから助けてやってくれ」
「うん、助けてあげよう。ねえ魔王さん、勃起しすぎて苦しいだろ。今すぐ外に出してあげるからね」
耳をしゃぶられる感覚に呑み込まれ、ひいひいと鳴きながら暴れる彼の股間にトーゴの手が伸びる。トーゴは魔王の股間の猛りを着衣の上から優しく撫で、そして感嘆の声を上げた。
「魔王さん、すごくヌルヌルしてる。魔王さんのチンコも俺達のチンコと同じなんだなあ。気持ち良いと普通に勃起するし、こんなにびしょびしょに濡れちゃうんだ」
「あっ、あっ、だめ、やめろ、さわるな、ァ、さわんないで、アアッ」
ねっとりと耳を舐られながら着衣越しにペニスを撫でられ、魔王は堪らず悲鳴を上げて俺の体に縋りついた。俺は魔王の後頭部へと手を回し、耳殻の凹凸の一つ一つを彼自身へと教え込むよう、丁寧に丁寧に舌の先でじっくりとなぞった。
舌が動く度にチュクチュクと耳に直接注ぎ込まれる水音は、恥ずかしがり屋な彼の心を激しく煽ってくれている事だろう。トーゴの手が魔王のショートパンツを脱がせようとするが、独特の衣装であるがゆえに容易に寛げる事が出来ない。一生懸命に着衣を脱がせようと頑張るトーゴの指が布越しに彼の性器に軽く触れる度、そのもどかしく微細な刺激に彼の中心はますます膨らみどんどん窮屈になっていく。
「あっ、だめ、でる、あっ、いく、あ、ぃ、いくぅ……ッ!」
びゅく、と彼の着衣の中で無垢な欲望が敢え無く爆ぜる。布面積の少ない彼のショートパンツはその失態を少しも隠してくれはせず、溢れた精液はショートパンツの隙間からタラタラと垂れ落ち、卑猥な衣装の魔王の姿をより破廉恥なものとする。
魔王はカッと全身を赤くし、今にも泣き出しそうな顔をしてプルプルと体を震わせた。
「あれっ、魔王さん。精液、おもらししちゃったの?」
「あ、あ、ちがう、ああ……っ」
遠慮のないトーゴの言葉に目を潤ませて首を左右に振る魔王の姿には、世界征服を目論むラスボスの威厳など欠片も無かった。生まれて初めて他者から与えられる性的な刺激に耐え切れずに恥ずかしい衣装を身に纏ったまま精液を漏らした彼の姿は、俺に抱かれるただの可愛い受けキャラだった。
トーゴの指が魔王のショートパンツの脱がせ方を発見し、白い体液にじんわりと濡れた卑猥なパンツをゆっくりと下ろす。快楽に蕩けて抵抗する力を失ってしまった魔王の下半身が露わになる。精液にまみれた彼のペニスは未だに芯を失っておらず、勃起を晒してフルフルと愛らしく震えていた。
「魔王の上の服も脱がせてやってくれるか? 乳首を可愛がってあげてほしいんだ」
露わになった魔王の勃起を眺めながらニコニコと嬉しそうにしていたトーゴに呼びかけると、彼は快く頷いて魔王の網タンクトップを脱がせ始める。魔王は動揺してはいたが、やはり抵抗する気力はなく、トーゴの手によりあっさりとタンクトップを剥がされた。
魔王の裸体が外気に晒される。元々裸同然の卑猥な衣装を纏っている彼ではあったが、それでもやはり全裸にされるのは恥ずかしいらしい。うう、と悔しそうな表情を見せて涙目でこちらを睨んでくるがその姿に魔王らしい威圧感は微塵もなく、彼の視線は俺の興奮を煽るばかりの淫らな挑発でしかなかった。
俺を睨むのに忙しく、油断していた魔王の乳首にチュッとトーゴが口付ける。突然の事に驚いた魔王は表情を緩め、慌ててトーゴを引き剥がそうと身悶えた。しかし既にトーゴの唇は魔王のウブな乳首にチュウッと吸い付いており、初めての刺激を受けた魔王は逃げ場を失い弱々しく首を左右に振って未知の快楽を散らそうとあがいた。
俺は魔王の耳元に、わざと吐息を浴びせながら甘く囁いた。
「乳首、気持ち良いんだね?」
「あっ、あっ、きもち、よくない……っ!」
魔王様の必死の反抗。勃起を晒したその先端からタラタラとだらしなく蜜を漏らしているにもかかわらず、その身に受ける快楽の存在を否定する。俺はそんな魔王の態度に高潔さを感じ、そしてその高潔な彼がグズグズに蕩けて快楽に陥落していく様を見届けたいと強く願った。
ちゅ、ちゅ、と耳殻にキスをしながら、彼のペニスへと手を伸ばす。びしょ濡れのそこは俺の手に触れられるとビクンと元気にその身を跳ねさせ、濡れそぼった亀頭の先からトロトロと淫猥な蜜を零して俺の手をもじっとりと濡らした。それはまるで、これから自身に快楽を与えてくれるであろう俺の手に対する感謝の洗礼のようであり、ただ触れられただけで淫らに濡れる無垢な陰茎をどう扱ってやろうかいう俺の加虐心を引き出す呼び水の役割を果たしていた。
勃起した彼の幹を掴み、ゆるゆると軽く上下に扱く。シンプルなその動作だけでも性的な経験が皆無である魔王にとっては刺激が強すぎるのか、アアッと悲鳴を上げた彼はそのままあっけなく射精に至った。
「また出ちゃったの? 魔王はエッチだなあ」
好き放題にしゃぶり尽くされふやけた魔王の耳へと唇を寄せ、フフッと笑みを浴びせかけつつねっとりと熱く囁きかける。
「うるさい、ちがう、おれは、えっちじゃないっ」
「魔王のそういう意地っ張りな所、すごく可愛いよ」
はふはふと浅く荒い呼吸を繰り返す魔王は、乳首とペニスを同時に責められすっかり茹で上がっていた。俺は射精直後の彼のペニスを休まずぐちゅぐちゅと左手で扱きながら、右手を彼の尻の谷間にゆるりと滑らせ、この世界の誰もが見た事のない魔王のアナルを指で探った。
「あっ、あっ、なにやってんだ、あっ!」
アナルセックス、という概念が果たして彼にはあるのだろうか。設定の薄い彼は、この世界におけるボーイズラブの関係性には本来組み込まれていない立場であるのかもしれない。もしかすると、物語の登場人物ではなく『魔王』という装置でしかないような彼にはそもそもアナルが与えられていないかもしれない。アナルという物は人間にとって大事なものに違いないが、ボーイズラブの世界にとっては受けキャラ以外のアナルというのはさほど価値がないものだ。不要なアナルはその世界から省略され、埋め立てられていたとしたって何ら不思議ではないのだ。この魔王には満足な衣服や住居のみならず、もしかすると肛門すらも与えられていないかもしれない。そんな可能性を思いながらも丁寧に彼の割れ目をなぞると、俺の指は一つの窪みへと辿りつき、その第一関節は秘められたアナルの無垢な入り口に触れるやいなやツプリと飲み込まれて行った。
ああん、と魔王の口から非常に情けない声が漏れる。良かった。彼の尻にもきちんとアナルが設けられていた。
「あ、ぁ、なにを、して、んんッ、アッ」
発見された後孔をまさぐられる魔王の体が震え、混乱に満ちた嬌声がぽろぽろと零れ出る。いくら強い魔王といえど、ここの防御力はゼロらしい。ぐちゅぐちゅと激しくペニスを扱き、止めどなく溢れる精液と我慢汁のカクテルを手に取りゆったりとアナルに塗り広げる。尻にそんなものを塗られるのは初めてであろう魔王の困惑は計り知れず、彼は自分が何をされているのか全く分かっていない様子だった。
トーゴに乳首をしゃぶられ、俺にペニスとアナルを攻められ、魔王は自身に与えられる激しい快楽に悲鳴を上げて身悶えるばかりとなっていた。
快楽も過ぎれば苦痛に変わる。この世界のラスボスだって例外ではない。ボロボロと涙を零しながらイヤイヤと左右に首を振る魔王はひたすら可哀想であり、そして同時にとても可愛らしかった。
魔王のアナルにずぶりと中指を埋め込むと、尻に突然未知なる来訪を受けた魔王は大きな悲鳴を上げて飛び上がった。
「大丈夫? 痛かった?」
「ひ、ぁ、わかん、ない……ッ!」
ぐすぐすと泣きじゃくる魔王は、それでも激しく陰茎を勃起させたままで滾々と我慢汁を垂れ流し続けていた。もしかすると、彼には被虐嗜好があるのかもしれない。そうでなければ、あんな恥ずかしい衣装を纏って正気でいられる訳がない。
「わかんない? じゃあこれは?」
「ひ、あ、あああんッ!」
中指に加えて薬指を埋め込むと、勃起した魔王のペニスの先からトロトロと白濁した液体が溢れた。初めてのアナル攻めでトコロテンに至るだなんて、さすが魔王だ。俺は更に人差し指を追加させ、三本の指でグチュグチュと彼のアナルを暴いた。
「あ、ああっ、だめ、あ、俺、まおう、なのにっ」
泣きじゃくりながら快楽に悶える彼の口が、弱々しく情けない嘆きを漏らす。自分は魔王であるという矜持を未だ失う事無く大事に抱き続けている彼は、やはりどこまでも高潔だった。
「大丈夫だよ、魔王。すごく可愛いよ。初めてなのに、こんなに上手に気持ち良くなれるなんて、魔王はすごいね。魔王は偉いね」
嗚咽に震える彼の体を抱きしめながら、優しく甘く耳元で囁く。
大丈夫だよ、魔王はすごいよ。そう言い聞かせながらぐちゅぐちゅとアナルの深部を抉ると、熱い肉壁はキュンキュンとうねり、嬉しそうに俺の指へと吸い付いた。
「アルファ、もうそろそろ挿れてあげなよ。魔王さんが可哀想だよ」
あまりにもヒンヒンと情けなく泣いている魔王を見ていられなくなったのか、優しいトーゴが俺に彼への挿入を勧める。全身を汗に濡らしてぐったりとしながらひっきりなしに淫らな嬌声を上げ続ける魔王の両足をガバリと開かせる。そこに見えたアナルは奥の奥まで見事に暴かれパックリと口を開いており、すっかり準備の整った性器と化して陰茎の到来を待ち構えていた。
俺は自身の着衣を寛げ、勃起した自身の陰茎を取り出した。それは決して引っ込み思案な弱虫の芋虫などではない、世界を救うに相応しい実に立派なペニスだった。
トーゴが嬉しそうにそれを見ながら、魔王に向かって呼びかける。
「魔王さん、今からアルファが魔王さんを楽にしてくれるからね。愛の力だよ、魔王さん」
「なに、それ、あいの、ちからって、なに、あっ、あああああッ!」
何も知らない魔王のアナルに亀頭を宛がう。ずぶ、と先端を呑んだそこは大喜びで肉壁を陰茎へとしゃぶりつかせ、膨張した太い幹を難なく奥へと引きずり込んだ。
熱くうねる肉の舞いに俺のペニスが揉みくちゃにされる。ラスボスのアナルのその烈しさは、油断するとペニスだけにとどまることなく俺の精神や魂までも全てを丸呑みにしてしまいそうな、前人未到の計り知れないダンジョンだった。
それでも俺は未知なる魔窟に屈することなく、総攻め主人公のプライドを抱きながら恐れることなく魔王の奥を己の矛で深く穿った。これは戦いだ。そしてセックスだ。負けられないセックスなのだ。世界の命運が俺のペニスにかかっているのだ。
最奥をペニスで突いた俺は、ゆるりと一度腰を引いて再び魔王の奥を突いた。ばちゅん、ばちゅんと激しい音が鳴り響く。俺は魔王に体を重ね、そのまま激しく腰を振った。
「あっ、あっ、あっ、あっ!」
ゆさゆさとおれに揺さぶられる度、魔王の口から愛らしく淫らな嬌声が上がる。トロトロと精液を垂れ流し続ける魔王のペニスはすっかり線が緩んだのか、その放出を止める方法を忘れたようにダラダラとひたすら淫靡な汁にまみれ続ける。キュウ、キュウ、と彼の熱い肉壁が俺の陰茎に擦られる度その快楽を逃すまいと必死に肉棒に食らいつく。魔王の腕が俺の背中をギュッと抱きしめ、もっと自分に密着してくれと愛らしくねだる。
「ねえ、魔王。俺のこと好き?」
「あっ、あっ、あっ!」
汗を散らして乱れる魔王に問いかける。すっかり蕩けた彼の頭は瞬時に俺の言葉を理解できないのか、ひたすら嬌声を上げて俺に身を委ねている。
「俺と一緒に、幸せになろうよ。俺のこと、好きでしょ?」
涙に濡れて焦点の定まらない魔王の瞳が懸命に俺の姿を探し、ウンウンと必死に何度も頷く。
自分は魔王。唯一与えられた設定に従い、魔王として生きてきた男。この世界において唐突に総攻め主人公という役割を与えられた俺には、彼の心がよく分かるような気がした。付与された役割を鎧のように纏いながら、その内側では誰にも言えない苦悩を抱える。服が恥ずかしいだの寒いだの、童貞だのインポだの、決してそれを表になんて出せはしない。魔王だから。総攻め主人公だから。捨てる事が出来ない設定を、偽りの自分をひたすらに懸命に演じ続ける。
――もう良いんだよ、魔王。俺がいるから大丈夫。俺はもう、童貞じゃないんだ。インポだって治ったんだ。俺はもう、心身ともに総攻め主人公になれたんだ。だから俺は、お前をこうして抱きに来たんだ。お前が演じる『魔王』を剥ぎ取り、俺はお前を抱きに来たんだ。
この世界の全てを抱いて、お前も含めた皆で一緒にハッピーエンドに向かうんだ。
「魔王、言ってごらんよ。言って良いんだよ。俺のことが、好きだって」
「は、あ、あ、すき、すき、あ、すきっ」
俺への好意が、魔王の矜持を上回る。高潔な彼は我を忘れてすっかり快楽に溺れており、甘く乱れた彼の欲は理性を失い夢中で俺に縋りつく。俺はそんな彼を抱きしめ、すきすきと必死に繰り返す彼の濡れた唇へとしゃぶりつき、ガクガクと激しく腰を振った。
ギュウウ、と彼の蕾が窄まる。汗にまみれて赤く茹だった彼の裸体が反り返る。絡み合う唇と唇の隙間から甲高く通る嬌声が漏れ出る。何度も何度も絶頂に至り、グッ、グッと断続的に痙攣した彼の体の最深部へと亀頭をねじ込む。収縮する肉壁を押しのけるように激しく大きく膨張したペニスの先から勢いよく精液が迸る。
俺は魔王を抱きしめながら、最後の一滴までも残らず全てを彼の中に叩きつけ、そして怒涛の如き快楽を乗り越えフウッと深く息を吐いた。
「魔王?」
ビクンビクンと絶えず痙攣する魔王は、気を失っているようだった。つい最近まで童貞がアイデンティティであった俺は知らなかったのだが、もしかするとセックスというのはどちらかが気絶する事で終了するルールになっているのかもしれない。
ちゅぷん、と魔王の中からペニスを抜くと、ぽっかりとあいたアナルからはトロトロと精液が溢れてとても卑猥な光景を成していた。その様子にキュンと胸がときめいた俺は再びそこにペニスをねじ込みたくなったが、魔王が気絶しているためルール的に今回のセックスは終了であると判断し、零れ出た精液を指先で拭うと彼のほぼ裸に等しいスケベな衣装を着せてやった。
「終わったね、アルファ」
俺と魔王のセックスを見届けてくれていたトーゴが、俺にそっと寄り添いながら穏やかに微笑む。
そうだ、終わったのだ。俺はこの世界の全てを抱いたのだ。満足して頷く俺の股間へと、トーゴの手がゆるりと伸びる。驚いて彼の方を見やると、トーゴは穏やかな笑みの裏に色気を滲ませニヤリとした。
「アルファのここ、まだ元気だろ? これから村へ帰るために、俺にはまた魔力が必要だからさ」
すりすりとトーゴの手が俺のペニスを撫でる。皆まで言わずとも、俺にはトーゴの求めている物が分かった。
俺はハハッと笑いながらトーゴを抱きしめ、その場に彼を押し倒す。彼の着衣の中へと手を潜り込ませ、しっとりと吸い付く柔らかな肌をゆるゆると撫でる。俺のペニスは萎えることなく勃起しており、トーゴの期待に応えようと元気いっぱい張り切っている。
必要とされれば、俺はそれに応えたい。猛る股間をトーゴの臀部に押し付ける。
トーゴも魔王も、リンゴの彼もムキムキのパイカさんも、村の皆もこの世界も、全て丸ごと抱いてやる。世界の命運を受け持つ俺のペニスが脈動する。
ジワリと先端から滲んだ露のきらめきはこれからの俺達を待つ明るい未来を示唆するように、とめどなく溢れては艶々と輝き続けていた。
――――
村人たちは魔王を引き連れて帰って来た俺達の姿に大層驚いた。
魔王が再び襲撃しに来たと誤解した皆が一斉に彼を攻撃しようと身構えるのを慌てて静止した俺は、気まずそうに小さくなった魔王を皆の前に立たせて紹介した。
「彼を俺の妻に加えようと思うんだ」
毎週村を破壊しに来ていた敵を妻にするなどと言い出した俺の突然の発言に、当然ながら村人たちはざわついた。何か騙されているのではないかと不安になる人も多くいたが、その動揺もさほど長くは続かなかった。なぜかと言えば、この世界は設定がとても緩かったからである。アルファ様が良いなら良いかと、逆にこちらが心配になるほどに村人達は魔王を自分達の仲間に迎える事をすんなりと受け入れてくれたのだった。
村を襲撃するという自分の役割を放棄した魔王は、ただの素直な優男だった。もうそんな服は着なくて良いと言ったのだが、本人はそれを拒否して布面積の少ない魔王衣装を纏い続けた。
恥ずかしくてたまらない、こんなのは趣味じゃない。そう言いながらもずっとその衣装を着続ける彼は、結局の所その恥ずかしさが癖になっているようだった。穏やかな村の中を闊歩する彼の姿は一見異様でありながらも、誰かがそれを指摘することもなく、魔王の存在はこの村の日常の中へと難なくあっさり溶け込んだ。
魔法使いだらけの村で、スケベ衣装の魔王が仲良く暮らしている。
少々異常かもしれないが、この世界にとってそれは何の問題もない正常な光景となっていた。
魔王の襲撃、という危機が消滅した世界は、限りなく平和なものとなった。
俺は百人弱の妻と、一人の魔王と、一人の親友に囲まれながら、最高のハーレムを築いていた。
皆俺のことが大好きで、年がら年中俺を求めてくれる。一本しかない俺のペニスを求めて皆が寄ってくる。
俺のペニスが世界の中心なのだ。俺は世界を抱いているのだ。
この世界はデタラメだ。オメガバースのようでオメガバースではない。ハーレムの中には妻として設定された人々だけにとどまらず、親友も魔王も参加している。
でも、自分を吸血鬼だと誤解した所から走り出した俺の世界は、このくらいデタラメであるほうが調度良いかもしれない。
俺はこの適当な世界を、何よりも愛しく思っている。
村は今日も平和であり、そして誰もが俺を一途に愛している。こんな幸せがあるだろうか。
「アルファ様、魔力を頂きたいのですが……」
「アルファ様、俺にも一つ頼みます!」
「アルファ、今夜うちに来ないか?」
「下等種族……じゃなかったな、アルファ。俺もまぜてくれないか?」
外を歩けば、皆が次々と俺を求める。俺は喜びを噛み締めながら、漏れなく皆の誘いに乗る。転生してきて本当に良かった。ここに生まれて本当によかった。
な、相棒。心の中でペニスに向かって呼びかける。ペニスは何も言わないながらも、いつでも誰でもかかって来いという自信に満ちて下着の中で逞しく胸を張っていた。
俺は大きく天を仰ぎ、満ち足りた気持ちで深く息を吸い込んだ。
ハッピーエンドはどこまでも続く。めでたしめでたしのその先の未来も、俺のペニスが切り開く。
不安なんて一つもない。希望以外に何もない。
全ては俺が何とかする。それが俺には出来るのだから。
俺は、この世界の主人公だ。
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