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第六章 キスはしないんですか?
倫。君の狙いは何だ?
何が目的で、私の屋敷へやって来た?
怜士の、厳しい問いかけだった。
倫は、悩んだ。
別の世界からやって来た異邦人だ、と告白するか。
しかしそれでは、変人と思われるかもしれない。
怜士の弟・丈士の送り込んだスパイだ、と白状するか。
しかしそれでは、殺されるかもしれない。
倫は短い時間の中でさんざん迷ったが、前者を選択した。
(殺されるより、変人と思われた方が、ましだ)
それに、憧れのキャラクターだった怜士に、本当の自分を知って欲しかった。
クールで理知的で、そして凛々しかった小説の中の怜士。
彼ならば、この身に起きた不思議な出来事も、冷静に受け止めてくれそうな気がしていた。
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