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「丈士。忙しい中、来てくれてありがとう。嬉しいよ」 「いえ、別に! 今日は休暇ですし、そこの倫に、どうしても、と泣きつかれましたし!」  ふいっと視線を逸らし、言い訳めいた言葉を口にする丈士に、倫は下を向いて笑顔になった。 (照れてるんだな、丈士さま。別に僕は、泣きついたりはしていないのに)  それは怜士も感じ取っているらしく、やはり微笑みながらカップを手にした。 「さあ、いただこう」  バタフライピーは、癖のないハーブだ。  ライムを絞り爽やかな風味を足したお茶に、和生は蜂蜜を用意していた。 「お好みで、どうぞ」  蜂蜜の優しい甘味がプラスされ、怜士は、倫は。そして丈士も、和やかな心地になった。  お茶やお菓子をいただくうちに、ぽつりぽつりと会話も生まれ始めた。 「丈士。お父様は、お元気でいらっしゃるかな?」 「ええ、まぁ。相変わらず、です」 「と、いうことは。君は相変わらず、緊張の日々を送っている、ということか……」 「べ、別に!? お父様の厳しいご指導は、子どもの頃からの事ですし!」  この兄弟のやり取りから察するに、北白川家の当主は厳格な人柄らしい。 (だから丈士さま、どこか委縮したところがあるんだな……)  倫がそう把握したところで、丈士が妙に高い声を出した。

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