74 / 179
第十五章 癒しの倫
「ちょうどいい所に間に合ったな」
丈士がバタフライピーにライムを加える、ちょうどその時。
怜士は、急いで椅子に掛けた。
「さぁ、丈士。私に魔法を見せてくれ」
「は、はい」
くし形に切られたライムをつまみ、丈士はお茶にその雫を垂らした。
真っ青だったティーは、見る間に美しい紫色に変わる。
その様子を、この兄弟は感慨深く見つめた。
『すごく綺麗な青ですね、お兄様!』
『このお茶に、ライムを絞ってごらん』
『わぁ! 色が、紫に変わりました!』
『ふふ。面白いだろう?』
幼い頃が、仲の良かったあの日が、甦る。
「きれいですね、とても。すごく、きれいだ……」
溜息をつくような倫の声に、怜士と丈士は我に返った。
ともだちにシェアしよう!

