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 和生が差し出した、バタフライピーのお茶を、丈士はじっと眺めた。  美しい、青。  その色に、丈士の脳裏に怜士との温かな思い出が、鮮やかに甦って来た。 『すごく綺麗な青ですね、お兄様!』 『このお茶に、ライムを絞ってごらん』 『わぁ! 色が、紫に変わりました!』 『ふふ。面白いだろう?』 「……ライムを、取ってくれないか?」 「かしこまりました」  和生が渡すライムを、丈士は少し震える手で受け取った。  その姿を、倫は真剣に見つめていた。 (きっと、怜士さまのことを考えておいでなんだ)  兄弟の絆は、修復できるのだろうか。 (ああ。ここに、怜士さまがいれば!)  きゅっ、と倫が目をつむったところに、その怜士の声が聞こえてきた。 「遅くなって、すまない!」 「怜士さま!?」  瞼を開いて見ると、スーツ姿の怜士がこちらに向かって駆けて来る。  その後から、側近たちが数名必死で追っている。 「怜士お兄様」  ぱっと晴れた丈士の表情を、倫は見逃さなかった。 (やっぱりお二人は、信じあっておいでなんだ!)  倫の心も、澄み渡った。  楽しいお茶会の、始まり。  そんな予感が、していた。

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