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「まぁ、何だ。そこの倫が、どうしても、と言うので、ちょっとだけ時間を割いた」
「ありがとうございます。ようこそ、お越しくださいました!」
倫は素直に感激したが、すぐに顔を曇らせた。
「でも。実は怜士さまが、急用で来られなくなってしまわれました」
「何だって!?」
丈士はすぐに、不平を言い始めた。
人を呼びつけておいてなんだ、だの。
お兄様は昔からそうなんだ、だの。
残念ながら、この弟には、あまり政治的な頭は備わっていないらしい。
怜士の急用、と聞いて、外交問題の心配を考える回路は繋がらなかった。
「怜士お兄様が不在なら、もう帰る! せっかく私から、重大ニュースを伝えようと思っていたのに!」
「まあまあ、落ち着いて。こちらにお掛けになってください」
和生が椅子を引き、丈士に勧めた。
「ニュース、って何ですか? 僕、聞きたいなぁ!」
倫が明るい声を上げ、丈士の自尊心をくすぐった。
「実は、怜士さまから丈士さまへ、ぜひとのお茶を申し付かっております」
和生がドライハーブの詰められている瓶を、掲げて見せると、丈士の不平は止まった。
「そのハーブは。もしかして、バタフライピー、か?」
「よく、お解りで」
乾燥させても鮮やかな青の残る、バタフライピー。
その青に、丈士は何かを感じたようだった。
大人しく席につき、和生が支度を整えるまで、お行儀よく待っていた。
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