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「えっ、怜士さまが来ない!?」 「そうなんだ」  昨晩、倫は和生に連絡し、ティータイムに丈士が参加するかもしれない、と伝えていた。  和生も張り切り、それなりのもてなしの準備をしていたのだが……。 「何でも、緊急の事案が持ち上がったらしくて」 「10分だけでも、ダメでしょうか?」 「それが、全く動けないらしい」  和生の言葉に、倫の表情は自然と引き締まった。  国境の領地を与えられ、対外政策を任されている怜士だ。 (何か、外交で問題でも起きたのかな……?)  18歳の倫でも、容易に浮かぶ考えだ。  和生もまた同じことを危惧し、思案顔をしている。  そこへ、大きな声が響いて来た。 「おぉい! また、あの弟君がコソコソしてたぞぉ!」 「虎太郎だ」 「虎太郎さん?」  和生と倫、二人の元へ、声の主・虎太郎が男の腕を引いて来た。 「痛い痛い! 離せ!」  そしてその男は、確かに丈士だった。  昨日の迷彩服とは違い、今回はスーツを身に着けている。  こうして見ると、なるほど怜士の弟だけあって、垢抜けて見える。  父である公爵の秘書をしているだけあって、理知的に見える。  しかし丈士は、実に子どもっぽい仕草で虎太郎の手を振りほどいた。  和生と倫の前に、ふんぞり返って喋り始めた。

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