70 / 179

2

「怜士さまは、またお酒を飲んでおいででした」 『ふん。酒に逃げるとは』 「そうです。それほど、お疲れなんです。身も心も」  だから、自分に膝枕をして欲しいと、おっしゃった。  そう、倫は語った。 「そして。こうも、おっしゃいました」 『昔。幼い頃に、私と丈士はよくこうして母の膝に憩ったんだ。こう、両方から。母の膝を片方ずつ分け合って、ね』 「怜士さまは、丈士さまと昔のように、仲良くしたいと思っておいでなんです」 『怜士お兄様……。し、しかし……』 「丈士さま。明日の10時に、お茶にお越しになりませんか?」 『えっ』 「怜士さまと、ご一緒にティータイムを。そうやって少しずつ、仲良くしていかれませんか?」 『……』  丈士から、返事はもらえなかった。  黙ったまま、彼は通話を切ってしまったのだ。 「でも。考えてはくださったみたいだ」  もしかすると、明日の10時に来てくれるかもしれない!  ちょっぴり。  だけど、前進。  期待を胸に、倫は眠りに就いた。  明日が、待ち遠しかった。

ともだちにシェアしよう!