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久しぶりに、姉弟三人そろってお父様にお会いしたい。
そんな怜士の申し出に、父・明将(あきまさ)は当初身構えていた。
仲の良くない子どもたちには、これまで手を焼いて来た。
それが、集まって何をしでかすつもりだ?
そんな風に、怪しんでいた。
しかし、蓋を開けてみれば、どうだ。
三人で結託し、この父に意見を始めたではないか。
「お父様。私は政界から退き、侯爵の称号を返上したいと思っています」
「怜士さんの後任は、わたくしが務めます」
「どうか。怜士お兄様を、自由にしてあげてください!」
常に父の顔色を窺い、びくびくしている丈士までが、真っ直ぐに前を向いて毅然としている。
(何があったか知らんが、これは良い機会だ)
明将は、瞬時に判断した。
有能な彩華を、育児だけに集中させるのは、惜しい。
怜士は良く頑張ったが、ここらで息抜きをしないと、潰れる。
丈士を彩華の補佐に据えて、彼女の家庭と仕事の両立を図ろう。
そしてうなずき、一言だけ発した。
「いいだろう。構わん、好きにやりなさい」
三人の子らは、ぱっと表情を明るくして、喜び合った。
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