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「眠ってしまう前に、訊いておこう」
「……ん。はぃ?」
「明日は、どうしようか。やってみたいアクティビティは、ある?」
「僕。僕……」
考える前に、口が動いた。
倫は、そのまま素直に言葉にした。
「明日も、山頂に登りたいな……」
「今日、もう登ったじゃないか」
少し笑い声の、怜士だ。
「ん、でも……。また行きたい……」
「いいよ、倫。もう一度、登ろう」
「ぅん。ありがとぅ……」
怜士はもう、倫の眠りを妨げることはしなかった。
休むに任せて、そのべとべとになってしまった体を、ていねいに拭き清めた。
顔も、胸も、腹も、性器も、脚も。
つま先の、指の間まできれいに拭きながら、その手に掛かる倫の重さを記憶に刻んだ。
「私の、倫。消えないでくれよ?」
怜士は、倫が以前打ち明けた身の上を、忘れてはいなかった。
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