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第三十三章 めぐり逢い

 瞼を閉じていても、周囲の暗さが解る。  冷たい。  そして、固い感触が伝わってくる。 「寒い……」  感じるままにつぶやくと、意識がどっと呼び覚まされた。 「……怜士さん!」  倫は叫んで、目を見開いた。  返事は、無い。  体を起こして辺りを見渡し、愕然とした。 「ここは……!?」  倫は、両親の眠る墓標の前に、膝をついていたのだ。 「え!? 待って、ちょっと……!」  とっさに手首を見ると、そこにあるのは父の形見の腕時計だ。  怜士に贈られた、スマートウォッチではない。  時刻は、16時を少し回ったところだった。  間もなく雪に変わりそうな、冷たい雨が倫を濡らす。 「そんな……そんな!」  怜士さん、と倫は再び墓標に突っ伏した。 「う……あぁ……!」  戻ったんだ。  元の世界へ!  怜士さんのいない世界へ、逆戻りしてしまったんだ!  ぱたり、ぽたりと、大粒の涙が頬を伝っては落ちる。 「怜士さん……怜士さん……怜士さん!」  だが倫は、歯を食いしばり涙をぬぐった。

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