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第23話 陶酔する時間

 全身を痙攣させながら吐精すると、ぐったりとシーツに体を沈めた。  エリペールも同じようにその上から身を寄せる。まだ萎えていない、固さを保っているそれは孔の中で気持ちいところを刺激し続ける。   「馴染むまで、こうしている」頸を啄み、耳朶を甘噛みする。  余裕そうに見えているが、エリペールも時折呻っては腰が力む。  本当は腰を振りたいに決まっている。こんな時にまで我慢させているのも本意ではなかった。  彼の優しさは嬉しい。けれども僕も早くアルファの精を浴びるほど注いで欲しいと願っている。  オメガの本能は絶頂を味わうほどアルファを誘惑し、惑乱させる。  自我を失い、頸を噛むまでオメガのフェロモンで操り判断能力を失わせるのだ。  エリペールも少しずつ様子が変わってきている。  荒い息は興奮というよりも、獲物を狙う獣を彷彿させる。  目の前の餌に涎を垂らして『待て』をされている状態とよく似ているだろう。 「マリユス、マリユス……」  ラット状態に入る寸前、エリペールは僕の名前を囁いた。  腰がゆらりと揺れる。  先端ギリギリまで引き抜き、一気に貫く。打ち付ける際に、孔から滴っているオメガの液が飛び散った。 「ぁあっ!! ぁあっ!!」  突かれる度に嬌声を上げる。屹立の先端がシーツで擦れて刺激を与え、孔だけに集中させてくれない。その摩擦だけでも果ててしまいそうになる。  孔の痛みは徐々に快感へと変わりつつあった。  下から上へ突き上げるように律動する。  エリペールもだんだんと気遣いをしなくなってきた。 「マリユスの中は暖かくて気持ちいい」 「僕も、気持ちよくて……また……ん、んん……」 「何度でも果ててくれて構わない。私で感じてくれるなど、本望ではないか」 「でも、でも、エリペール様の精が欲しくて堪らないのです」 「マリユス……」  エリペールはしかし、これから激しくなると期待していた注挿を止めてしまった。 「あっ……」  もう少しで達しそうだったのがいきなり中断され、肩透かしを喰らってしまった。  何か怒らせるようなことを言ってしまったか……頭がクラクラしていて、思考回路は停止寸前。  思ったことをそのままを言葉にしてしまい、自分がなんと言ったのかを自覚するまでにタイムラグがある。  突然動きを止めてしまったエリペールを振り返り、肩越しにこっそりと表情を伺った。  エリペールは僕を見下ろし、息を切らしている。 「あの……エリペール様?」 「マリユス、今言った台詞はもう取り消せない。良いな?」 「はい……」  表情豊かなエリペールが、怒っているのかどうなのかも読み取れなかった。  彼は一度男根を引き抜き、仰向けに寝かせた。  両脚を開かせると、再び男根を挿入させる。 「んっ、ふぅ、ん……」  しっかりと解された孔は、吸い付くようにエリペールの男根を飲み込んでいく。 「マリユスが絡みついてきている。私を欲していたのだな」 「んぁ……はぁ……はい、エリペール様の全てを欲しています」 「そのようだ。締め付けて、離してもらえそうにない」  愉悦の笑みを浮かべ腰を鷲掴みにすると、いきなり激しく腰を揺らし始めた。  根本にアルファ特有の亀頭球が現れ、エリペールが達するまでは抜けなくなった。  肉胴の中でさらに怒張する。  膂力の限り腰を打ちつけ、最奥を貫く。 「んぁぁああっっ~~!!」  あまりの衝撃に意識を飛ばした。  時間にしてどのくらいかは測れないが、次の強い衝撃で再び意識を取り戻すと、エリペールはまだ律動を止めてはいなかった。  完全にラット状態に入り、オメガに種付けすることだけに集中している様子である。  意識が戻ると共に、快楽の波が押し寄せ僕は自分が吐精しているのか、尿を漏らしてしまったのかも判断できないほどびしょ濡れになっていた。 「マリユス……私の、マリユス……誰にも渡さない……」  エリペールが呪文のように唱えながら繰り返し呟いている。 「射精()して……貴方の精を、中に注いでください」  懇願すると、腰の動きは苛烈を極め、低く呻ると同時にエリペールが絶頂に達した。  腹の奥にドクンドクンと波打つように白濁が流れ込む。 「あ……中に、エリペール様が……」  アルファの精が身体中に染み渡っていくのを感じる。  じんわりと体が満たされていくのを感じていると、エリペールは再び腰を揺らし始めた。 「え、あっ、ぁんっ、待ってください、まだ、ぼく……」 「ダメだ。全然治らないのだ。私のアルファ性がもっとマリユスを求めている」  たっぷりと射精された白濁を撹拌するように掻き混ぜられる。  ぐちゅぐちゅと音をたて、内壁を擦り最奥の更に奥へと這入り込む。  エリペールからは『オメガを孕ませたい』という本能が強く現れ、無我夢中で抽挿を繰り返した。  背後から頸ばかりを舐めたり甘噛みを繰り返す。  次の吐精で噛むと狙っているとアピールしているようだった。  マリユスは突かれながら何度も意識を飛ばしている。  目は虚になり、エリペールから注がれる快楽の全てを受け入れるしかできない。しかし頭の中で一つだけ揺るぎなく考えていることがあった。 『番になってはいけない』

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