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01.「部屋でア×ニーしてるところ彼女が急に来て、見られた」
ぶっちゃけて言えば、出来心でしかない2人だった。
大学同期で今でも定期的に飲みに行くのは宗伍 くらいで、他の奴らは遠方に就職したとか、地元帰ったとか、24の若さで結婚したとか。
なんだかんだでメッセージアプリのグループトークなんかはゆる~く続いているが、サシで会えるのは宗伍だけ。
俺が週末呼び出して、オールで飲むか途中で潰れてどっちかの家で雑魚寝するのが常だった。
それでも最近はそんな機会も減ってきていて、もっぱらそれは俺の方に原因があった。
俺に、宗伍より優先して週末を過ごす相手が出来たから、つまり彼女が出来たから。彼女優先になるのは仕方ないだろ?
宗伍はそういうことでブチブチ言うような奴じゃなかったし、むしろ俺よりツレは多い社交的なタイプ。
昔っから男も女も友だち多くて、学生時代はあっちの方がなかなか捕まらないこと多かった。
そんなこんなで3ヶ月くらい宗伍とは会って無かったのだが、その夜俺は宗伍を呼び出した。
俺に彼女が出来てから、半年ほど過ぎた頃のことだった。
3ヶ月ぶりに会った宗伍は、相変わらずイケメンだった。特定の彼女居なくても、困っていないってのは多分噂だけじゃない。
コイツはそういうこと言わないけど、きっと上手いことそういう相手は見つけてるタイプ。いわゆるセフレとか、1回限りの相手とか。しかも出会い系とかナンパとかそういうんじゃなく、普通に出会って。
「宗伍、パーマかけたじゃん?」
最後に見たときはストレートだった黒髪が、ゆるいウェーブがかっていたから言ったら、
「前あったとき違ったっけ?」
笑って言った。フツーに似合ってるし、悔しいけど男前度が上がってる。
「またモテに来てる」
俺が言うと、何かに気づくようにして、
「片瀬がそんなこと言うの珍しいな」
と言った。鋭いよな、コイツ。
だけど俺はその時すでに酔っていたし、宗伍に絡むのをやめなかった。
だってその前日、俺は彼女にフラれてたから。
どっかで合コンやってる声がする、やかましい居酒屋。広い座敷は衝立で仕切られているけど、ザワつき半端ない。だけど俺らが会う時は、こうした学生時代を思い出すような居酒屋が多い。
宗伍はしばらく義理を欠いてた俺の呼び出しに、二つ返事で来てくれた。
俺は最初っからペース早く飲み始めたし、たぶん宗伍は潰れた俺を連れて帰ることになるのも想定していたと思う。
そのうち泣き出した俺に驚いて見せたけど、「しょうがねーな」というよう笑って見せた。俺の知り合いの中で、たぶんコイツが1番面倒見良いと思うし、優しい。
たまに辛辣なことも言うけれど、それは歯に絹着せぬって仲だから。
「何でフラれたんだよ?」
彼女の名前呼びながらグズグズと泣いてる情けない俺に、宗伍はやっと聞いてきた。たぶん俺が自分から言い出すのを待っていたけど言わないから、率直に聞いてきたんだと思う。
「絶対誰にも言うなよ?」
鼻水啜りながら言う俺に、
「えっ? うん」
戸惑うように言いながら、宗伍は店員の持ってきた梅酒サワーを受け取った。
「性生活の不一致?」
俺の言葉に、「はあ?」宗伍は梅酒サワーをひと口飲んでから頷く。
「俺さ、アナニーにハマってるの……彼女に知られちゃったんだよね」
そして告げた恥ずかしい告白に、
「アナニー? オナニーじゃなく?」
ピンと来ないよう答えた。その問いには既視感があって、俺はまたたまらない気持ちになる。
「そー、アナニー。ちんこじゃなく、ケツの穴でやるオナニー」
だけどそれを吹っ切るように言ってやったら、宗伍はブフッと梅酒サワーを吹き出しかけた。
「お前、ゲイになったの?」
「違う、好きなのは彼女だけ。バイでもない!」
バレたとき、彼女にも同じことを訊かれた。俺は同じように答えたけど、その時の彼女も困惑していた。
「でも別れたんだよな? つか、バレたの?」
宗伍はジョッキをテーブルに置いて、訊く。
「部屋でアナニーしてるところ彼女が急に来て、見られた」
「うわっ……」
「言い訳も出来なかったけど、俺が好きなのは彼女だけだってのは本当だし――だから」
「だから?」
「ディルドで俺のケツ責めてください! って土下座した」
ゴツッ! とテーブルの上に額をぶつけて言った俺に、
「ええっ!?」
さすがの宗伍も声を上げてから、黙った。
だって俺――彼女の手で、ケツ責められんの何度も妄想してた。
指とかも入れて欲しかったけど、さすがにケツだしハードル高いかな? って思って、直前までアナニーに使ってたディルドを俺と彼女の間に置いて、気づけば土下座してたんだよな。
彼女はめちゃくちゃ動揺してたと思うけど、嫌そうな顔は見せずにいてくれた。
たったいま、彼氏が自分自身のモノよりデカいちんぽの形したディルドをケツに突っ込んで、背面騎乗位みたいな大股開きのポジションで、めちゃくちゃに杭打ちしてた姿を見たばかりだったって言うのに――怒ったり罵ったりしないでいてくれた。
そして俺の彼女は可愛いだけじゃなく、めちゃくちゃ良い子で、土下座する俺を哀れに思ったのかディルドて責めてくれた。
彼女の白く細い手で後ろからディルドを深く突っ込まれたり、抜かれたり、いっぱいジュボ♡ ジュボ♡ してもらって、俺はいつも自分でやるのとは全然違う感覚にめちゃくちゃ興奮しまくってた。
彼女の名前ずっと呼んでて、触られていないちんこで射精して、そして――その3日後に、やっぱフラれた。それが昨日。
俺のフラれた経緯を聞いた宗伍は、言葉もないって顔で梅酒サワーを一気飲みした。
酔わずにはやってられなかったのかも知れないが、宗伍はザル通り越してワクの部類だから顔色は変わってない。
「絶対アレだ……変な声出るの我慢できなかったから、引かれたんだ!」
俺もビールをゴキュゴキュ飲み言ったけど、
「声とか出るんだ?」
訊かれ、急に恥ずかしくなる。
「お前、女とヤッてて気持ち良すぎて思わず声出ちゃう……とかない?」
「そりゃたまに、ウッ……とかくらいは出るけど……」
「それだけ? ウッ……だけ?」
「そんなもんだろ?」
「――マジで?」
もっとこう、声出ちゃったりしない? めちゃくちゃ気持ち良くて射精しそうなときは、さすがに喘いじゃったりしない? 女の子みたいのじゃないけど。
「宗伍、ちゃんと気持ち良いセックスしてる?」
思わず絡むのに、
「どんな声出んの?」
訊かれても、
「いや、具体的にはさすがに……」
いくら周りが騒がしいとはいえ、ここであんな声は真似できない。
「ハメ撮りとかないの?」
「ねーよ! あってもテメーには見せない!」
百万歩譲って俺はともかくとしても、彼女のそんな姿は俺以外の奴には見せられない。
「で、彼女にケツ責めさせて、変な声出しながらイッたの見られて、捨てられた……と?」
冷静に確認されると、また一気に羞恥が込み上げる。顔が熱いのは、酔いのせいだけじゃないだろう。またさらに涙が込み上げてくる。
「ど……どっかに、ケツ責めてくれる女の子いないかなぁ~? 宗伍、そういう子知らない?」
だけどあの興奮が忘れられなくて、恥を偲んで聞いたのに、
「エッチ大好きな子くらいなら知ってるけど、さすがにソッチに積極的な子には心当たりはないな……」
宗伍は言って、テーブルの上のボタンでまた店員を呼んだ。
「風俗とかでそういうのあるだろ?」
今度は日本酒を頼んだ宗伍に言われ、
「アナル性感マッサージとか?」
言った俺も、調べてみたことくらいはある。でも彼女が居るのに、そういうサービスを利用するのは気が引けていた。
もう、いないから誰に遠慮することもないんだけど――でもなんか、
「ちょっと怖いな」
ぼんやりと言うと、
「じゃあ男とか?」
訊かれ、
「そっちのが怖えぇじゃん!!」
首を横に振りつつ言うと、
「怖くなかったら男でも良いのかよ?」
ちょっと笑われて、ドキッとした。
「いや、男はさすがに……ゲイじゃねーし」
「でも素人の女の子にケツいじる技術ないだろ?」
宗伍の言うことはもっともだ。
「ケツはまんことは違うから、適当に触られたところでヨくなれるか分かんないし」
そして宗伍の言葉に感じた違和感に、
「お前、アナルセックスしたことあんの?」
思わず訊いてた。
「女の子と――なら、ある」
「ええっ!?」
今度は俺が驚きの声を上げる番で、
「M気のある子に好かれるんだよな、俺」
ちょっと気まずそうに言う宗伍に、そういう子がケツにも挿れて欲しいとねだるのか……と思ったら興奮した。
「ど……どんな感じ?」
「アナルに挿れた感じ? ンー……膣圧より締まるし、慣れた子だとちんぽに吸いついて来る。あと、ケツでイケる子だとめっちゃ喘がれる。死にそうな声上げながら、『もっと』ってねだられる」
め……ちゃくちゃヤッてんじゃん?
色んな子とアナルセックスしてんじゃん!!
「片瀬も女の子の喘ぎ方しちゃってるんじゃねーの?」
テーブルの上に頬杖をつき言った宗伍に、俺はギクリとして視線をそらした。
覚えがないわけじゃ……ない。でも、普通にちんこで彼女とセックスした時だって、声は出ちゃっていた。
ちょうど日本酒が運ばれてきたのに、宗伍は俺の前にもお猪口を置いてお酌すると、
「俺がハメても喘ぐのかな? お前」
不穏なことを言ってから、笑った。
や――っべ、一瞬だけだけど、想像しちゃった……。
「俺が好きなのはディルドだっての、男とヤるとかあり得ねーし、絶対に吐くわ」
俺は注がれた日本酒飲み干して、胸の焼けるような強さに顔を顰める。
「まあ、俺だってお前相手に勃つ気しねぇしな」
宗伍も酒を呷って、笑い崩れるように声を上げた。
■
そんな話をしていたはずだった。
俺はケツの快感にハマったせいで彼女にフラれることになったけど、男となんて真っ平ごめんだった。
宗伍 は俺が思っていた以上に遊んでいて、M気のある子とアナルでも遊んでいたけど、相手は女の子だけだった。
だけど店を出た時に、
「俺がディルドでケツ虐めてやろうか?」
耳元まで近づいて来た宗伍の口が言ったから、俺はアルコールのせいで暑いはずの身体にゾクゾクゾクッ♡ と這い上がる震えを感じた。
「ちんぽは貸してやんねーけど、ホテル行く?」
まるで合コンのあと、エロ目的でスマートなお持ち帰りする慣れたイケメンみたいに――いや、そうだった、こいつイケメンだったし、慣れてた!
だけど俺の鼓動はバクバクとものすごい勢いで動いていて、さすがにイケメンだって、宗伍だって男は嫌なはずなのに、頭の中ポーッとしたまま頷いてた。
彼女の手でケツにディルド挿入された興奮とか、中でちょっと動かされるだけで喘ぎながらトコロテンしちゃったこととか思い出す。
自分以外の人の手を借りてアナニーするの、たまんなかった。
俺は宗伍に腕を引かれ、そこから歩いて行けるラブホにチェックインした。
部屋に入った時には興奮し過ぎてて、既にちんこ半勃ちだったの笑われた。
「ズボンとパンツ脱いで」
ベッドの上で指示するよう言われるままズボンを脱いだら、パンツにガマン汁がシミを作ってた。それも指摘され、ケツ向けるよう言われ従ったら、後ろからパンツを下げられた。
ケツの穴丸見えくらい突き出して、ケツもタマの裏も見られて、
「縦割れしてんじゃん、エロ……」
俺のケツ穴をエロいと言われ、腰が揺れた。
「まだ触られてもないのにケツ振ってんの? マジでケツ好きなんだな」
改めて言われ、
「ッ……だから、そう言ってんだろ?」
俺はドキドキしながらも、突っぱねるように言った。
「ローションと、あと……ディルドどれにする? アナル用もあるけど……」
宗伍の手にしていたメニュー表のようなそれを、俺は起き上がり半勃ちしたちんこ隠しながら覗いた。さっきの居酒屋で「飲み物何にする?」と訊かれた時と同じように、だけど現状は何もかも違う。
「ここ来たことあんの?」
俺に訊かれるまま宗伍は頷く。
コイツやっぱ慣れてんな? と思ったのは、たぶんこのラブホにはそういったアダルトグッズが充実してるのだと、予め知っていたのだろう思わされるところにも現れている。
俺はエロいこと好きだけど経験人数はそんな多いわけじゃないし、いつだって俺主導で女の子としかこういうとこ来たことなかったから――何となくソワつく。
「どーすんの? 指だけで良かった? ならローションだけは部屋の自販機にあったと思うけど、どうせなら太いやつで責められたいだろ?」
ここに来て躊躇うのもおかしな話ではあるだろうけど言われ、俺はゴクッと唾を飲む。
「こ、コレがいい……」
そして指差したソレに、
「え、結構デカいけどマジ?」
驚くよう言った宗伍が笑うのに、
「……マジ」
俺は言いながらメニュー表をヤツに押し付けると、
「ケツ洗ってくる……」
ベッドを降りて、バスルームへ向かった。
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