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第33話 オレの我儘だけど

      しばらく話していて、ふと、オレはパンフレットを手に取った。  先輩の母校の参加の場所を確認。  ワークショップも近いし、販売の店も近い。  ふと思いついたことを、先輩に話すことにした。 「先輩、イベント、来てくれますか」 「……んー」 「先輩が居なくても大丈夫なんてことは無いです。皆も、先輩に会えるの楽しみにしてましたし、先輩も楽しみって言ってくれてたし……何より、オレは、先輩が居てくれないと嫌です」 「――嫌、なの?」 「絶対嫌です」  じーーっと見つめていると、先輩は、困ったようにちょっとだけ笑って。それから、ふぅ、と大きな息をついた。 「宮瀬が嫌なのかぁ……」  先輩は、「それは困ったね」と言って、また笑う。  その笑顔が弱々しいのを見て、オレは言葉を飲む。  ほんとは行きたくない先輩を、無理やり連れてくとか。ほんとは絶対したくないんだけど。オレ自身だって、そんなの、頑張れる性格じゃない。でも。それでも。 「……嫌です。先輩が行きたくないのも分かるんですけど……オレ、先輩が居てくれないと、ワークショップできる気がしません」 「何それ。できるって」 「緊張が甚だしいと思うので……先輩が居てくれて、写真とか撮ってくれたら安心できるので」 「できるよ。宮瀬、今日も出来てたし」 「……でき――る、かもしれません、けど……先輩と一緒に、頑張りたいんです」  口にしてから、胸が重くなる。  ……こんなのただの我儘だな。  先輩には関係ない。でも、先輩も、楽しみって言ってくれてた。それがあるから。  それに、これで先輩がイベントに行かなかったら、絶対、また、後に嫌な思い出で残るに違いない。そういう人だと、思うから。 「……これ、ただの我儘なのは分かってるんですけど……」  先輩は目を瞬かせて、少しの沈黙。  それから、ふ、と笑って。 「……その我儘、オレは嬉しいけど」 「え……」 「……ほんと、宮瀬には敵わないなぁ……」  困ったような口調なのに、声が少しだけ柔らかくて。  その響きに、胸がぎゅっと鳴った。 「先輩……?」 「宮瀬が嫌って言う方が、オレが嫌なのよりも、困るかも……」  そう言ってくれた先輩に、嬉しくなって。 「いやな記憶も……克服、しちゃいませんか……?」  先輩は、ふ、とオレを見て固まる。 「克服? あいつと話す、とか?」 「いえ。そういうんじゃなくて……ワークショップ。近いじゃないですか」 「……うん」 「こっちのワークショップの方が盛り上がれば――ちょっと、やり返した気分に、なりませんか?」 「……どういうこと?」 「向こうは、写真の撮り方とかなので……そこまで盛り上がるものじゃないと思うんですよ。オレ、先輩の写真見て思ったんですけど……先輩が、参加者の写真を撮って、その場で印刷してプレゼントするのはどうですか? 作業風景と、出来上がったぬいとのツーショットととか。スマホでも撮れるけど、こんなに綺麗な写真、もらえたら、絶対喜んでくれて盛り上がると思うんですよ。先輩の写真で、皆が笑顔になるとこ、見せつけるの、良くないですか?」 「…………」 「絶対、できると思うので」  オレは、はっきり、言い切った。

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