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第41話 一生分ドキドキ

「ふふ。あのさ、さっき、それ見て、もしかしてって思ったからさ……」 「なんですか?」  先輩は、オレの方に向けて、先輩くんを座らせると。ぬいを後ろ手に持ったまま、オレの隣に移動してきた。 「じゃーん」  オレの前に、二体を並べた瞬間――。  全く反応できずにフリーズ。 「………………あれ?」  反応が全くないことを不思議に思ったのか、先輩は、真隣のオレを振り返った。 「こっちが陽彩くんだから、こっちが貴臣くんなんだけど……しかも、宮瀬が着てた登山の時の服に似せてみたんだけど……似てなくて分かんない?」  むー、そっかー……と先輩は首を傾げて、「貴臣くん」とやらを持っているが。 「……それ、オレ、なんですか?」 「えっ。うん」 「オレを、作ってくれてたんですか?」 「うん。そう、なんだけど。似てない? 結構いい出来だと思うんだけどなあ。可愛くない?」  ほらほら、とテーブルに二体並べて座らせて、オレの方に見せてくる。  あの日の登山服を着た先輩くんと、同じく登山姿のオレのぬい。  ぬい同士が、ちょこんと並んで、光の中でこっちを見てる。  なんだこの……可愛さの暴力は……。 「せっかくペアにしたのになー」  ……なにこれ。可愛い。  やばい。可愛すぎる。  心臓が暴れて、息が詰まる。  だってこれ、先輩が、オレのぬいを作って、先輩くんに並べてくれたんでしょ。  あ、先輩の中では、「陽彩くん」か。何それ。死ぬほど可愛い。奇しくも「くん」呼びは共通だった。  どんな意味かはよく分かんないけど。  でもきっと、こうやって、二体並べるために。  しかも登山服がバレてたから、先輩も登山服にしてくれたんだよね。  ていうか、陽彩くんと貴臣くんて何。 オレ、心臓持たない。無理。  はーなにそれ、マジで可愛すぎるでしょ。  先輩は、可愛すぎ罪で逮捕されてしまうかも。 「宮瀬?」 「っ……はい!」  慌てて顔を上げた。変な声だったかも。でも先輩は不思議そうに首を傾げただけで、ぬいを並べ直して笑う。 「可愛いよね?」  その笑顔がもう、オレにとっては、完全に致死量で。  ……可愛いのは先輩。そう思いながら、頷く。  オレ、今この瞬間、一生分ドキドキしてるんですけど。  もう、だめだ。 「今度さーこの子たちと一緒に、登山しようよ、登山! また星見よう?」  ……オレが、言おうと思ってたのに。  登山服の先輩をあげて、今度、登山付き合えるように頑張りますって。言おうと思ってたのに。  あーもう――好きだ。  言葉にならないくらい。  どうしようもないくらい。  もう、心の中、悶絶中のオレの横で、カメラを持ってきて、パシャ、とぬいたちの写真を撮った先輩が、「あ」と言う。  ふふ、と笑いながら、テーブルを離してカメラを置くと。 「四人……? えーと。二人と、二ぬい、で撮ろ」 「……っ」  タイマーして、オレの隣に。 「はい、宮瀬が貴臣くん持って!」 「……っ」  それぞれ一体持って、真ん中でぬいを近づける。 「はい笑ってー!」  言った直後、シャッター音。  すぐ確認に行って、また笑顔。 「お、撮れたよー」 「良かったです……」  ダメだもう。可愛くて疲れた。  もうぐったり。

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