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#Two
その父親はこの土地に腰を下ろしてもやはり庭師の職に就き、ひょんなことから五等爵の第三位の伯爵家の目に止まったのが、紅緒の恋のきっかけでもある。
紅緒の恋した相手は、千種家を専属の庭師として迎え入れてくれたハミルトン家の嫡男、ティボールトだ。
彼はとてもハンサムで、流石は外国人というだけのことはあり、日本人の血を持つ紅緒よりもずっと背が高い。均衡のとれた身体は四十二を過ぎた年齢でもまったく衰えていない引き締まった肉体とすらりとした長い足。麦畑を思わせる流れるようなブロンドは襟足までに切りそろえられ、清潔感がある。
紅緒が特に好きなのが、澄み切った空の蒼をした目だ。普段は鋭い双眸をしているが、ひとたび笑うと目尻には年相応の小皺が浮かぶ。優しく穏やかな表情へと変化するのだ。
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