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#Four

 《chapter Ⅱ》 『いろは楓』はカエデ科で、もともと東アジアで生息する落葉樹だ。だから紅葉は日本ほど赤に染まらず、葉もやや小振りである。また、湿気を好む傾向にある。けれどもこの地域でも栽培は可能だ。乾燥さえ防げば赤く色づく。最近の紅緒の仕事といえば、もっぱら楓の水やりだった。 「やあ、いつ見ても美しい庭だね。まるで亡きシャーリーンがここにいるようだ」  ふいに後ろから声を掛けられ、紅緒の心臓がほんの一瞬、止まる。  いつだって彼の低い声は紅緒の耳孔を刺激する。声を掛けてきたのは誰かなんて顔を見なくても判る。  この城の主人、ティボールト・ハミルトンだ。  三十年という長い年月を恋の檻の中で捕らわれているのだから……。  紅緒は跳ねる心臓を落ち着けて、振り向いた。 「おはようございます、ティボールト」

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