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#Five

 果たして自分は笑顔がつくれているだろうか。  紅緒の心配は、しかし無用だった。ティボールトの視線は紅緒にはなく、最愛の妻であるシャーリーンが愛していたいろは楓に注がれていたからだ。  彼は今もシャーリーンを愛している。  そう実感させられれば、紅緒の胸に氷のナイフが鋭く突き刺さる。  胸に突き刺さったナイフはやがてじんわりと身体全体に周り、まるで毒牙の如く蝕んでいく。身体中のすべてが冷たく凍りついていく。  いつだって彼はこんなに身近にいる自分に見向きもしない。  それもそうだろう。なにせ紅緒の外見はそこら辺にいる誰よりも見窄らしく、東洋人独特ののっぺりとした地味な顔立ちだ。今年で四十二という年を重ねた自分には小皺が目立つ。同じ年齢でもティボールトとは月とすっぽん。彼のような気品さえもない。

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